ペルソナ5 サウンドの魅力
今回はペルソナ5についてです(個人的な趣味全開の内容で申し訳ありません)。
このサウンドトラックは非常に素晴らしく、数曲聞くだけでも普段、取り上げているポップスとはサウンド感が明らかに異なることがわかると思います。ということで、今回は理論的なところも触れていきながら、いくつかピックアップしてみていきたいと思います。
ペルソナ5 サウンドの謎とは?
「Wake Up, Get Up, Get Out There」という楽曲です。イントロからもうかっこいい。Key:Gm(♭2)の楽曲にもかかわらず、Cコードが使用されているのが特徴です。通常であれば、ここはCmというコードになるんですが、あえてナチュラルのE音が使用されており、かっこいいサウンドを生み出しています。
〇Wake Up, Get Up, Get Out There – 冒頭抜粋-
モード(Mode)という概念
実は、ペルソナ5のサウンドの核となっているのが『モード(Mode)』という概念です。ほぼ、スケールと同義と言ってしまってもいいかもしれません。よく使用されるのが、チャーチモード(教会旋法)と呼ばれる7種のスケール。
アイオニアン(Ionian)とエオリアン(Aeolian)は、実質メジャースケールとマイナースケールと同じなので、響きが異なるのはそれ以外の5種類ということになります。
ドリアンモード(Dorian Mode)の活用
その中でも、通常のマイナースケールの第6音を半音あげた『ドリアンモード(Dorian mode)』は、最も使用頻度が高いモードと言え、ゲーム音楽やアニメなどの劇伴音楽に不可欠なサウンドとなっています。
〇いつか帰るところ / FINAL FANTASY Ⅸより
〇広野を行く / ドラゴンクエストⅠより
〇懐かしき歌 / 聖剣伝説 より
〇New Job / アニメ「リコリス・リコイル」 より
第6音を半音あげただけなのですが、通常のマイナースケールよりも”明るくなった感覚”や”ツンっとしたシックな感覚”がするのではないでしょうか。ペルソナ5では『Phantom』という楽曲にドリアンモードが使用されています。
〇Phantom – 冒頭抜粋-
KeyはF#m(#3)。主音であるF#をルート音として、上にF#ドリアンのコードを乗っけています。聴いてもらいたいのが、B7/F#のD#音。ここがまさにドリアンの特性音になっています。
さらに『Last Surprise』のAメロ。Key:Dm(♭1)なのですが、伴奏にしれっとB音が使用されており、ドリアンの響きになっています。
〇Last Surprise – Aメロ抜粋-
これは演奏上のテクニックでもあるのですが、全音上のマイナーコードを重ねることによって手軽にドリアンの響きが得られます。
この楽曲の場合、Em/D(Dm7(9,11,13))であり、主音であるD音に全音上のコードのEm(E・G・B)を乗っけています。マイナースケールの音を鳴らしてしまうと、少し辛気くさい印象になるのですが、第6音を半音上げるだけで、カッコいい響きが得られます。
同主調(C、Cm)を行き来する
引き続き、『Wake Up, Get Up, Get Out There』のAメロを見てみます。Key:Gmなのですが、コードとしては、メジャーコードとマイナーコードを繰り返していることがわかります。
〇Wake Up, Get Up, Get Out There – Aメロ抜粋-
つまり、1小節おきに同主調(Key:GとKey:Gm)を行き来しており、Keyが曖昧になっているといえます。このような手法は『Phantom』でもみられます。
〇Phantom – 冒頭抜粋-
Key:F#mだったものが、いきなりD#m7に展開することでKey:F#へと変化します。そのあとは、ツーファイブワン進行で、Key:F#の響きへと戻っています。
『Last Surprise』のサビもこのように解釈できますね。半音ずつ下行する印象的なコード進行ですが、A♭maj7がKey:Fmのコードになっています。
〇Last Surprise – 冒頭抜粋-
『Tokyo Daylight』でもみられますね。3小節目でFmaj7に進行することで、Key:Dmの世界に行き、直後にまたKey:Dに戻るということになっています。
〇Tokyo Daylight- Aメロ抜粋-
この辺は、サブドミナントナントマイナーと発想は同じなので、ポップスでもよく使用される手法ですが、これらの楽曲では、かなり効果的に使用されていることがわかると思います。
この同主調の行き来というのもペルソナの楽曲ではよく使用されているといえます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
個人的に好きな楽曲を数曲のみ取り上げただけですが、かなり多彩なサウンドコントロールが盛り込まれていることがわかるかと思います。
この辺のサウンド構築というのは、フィーリングというよりは理論的なことを知っていた方が扱いやすい気がします。ぜひ、作曲や演奏に取り入れてみると、これまでとは異なる世界が開けるかもしれません。
参考になれば幸いです。
では!