コード(和音)理論

ポピュラー音楽におけるドッペルドミナント(ダブルドミナント)の使用例について〜

ドッペルドミナント(ダブルドミナント)とは?

タイトル通り『ドッペルドミナント(Doppeldominant)』について見ていきたいと思います。

これは簡単にいうと『ドミナントの前に置かれたドミナントコード』になります。ディグリーで考えると『Ⅴ度のⅤ度の和音』の関係になるので、結果的に、そのKeyにおけるⅡ7を指すことが多いです。※正確にいうと、ドミナントをトニックに見た時のドミナントコードになります。

したがって、楽曲においてはⅡ-Ⅴ-Ⅰというコード進行で登場することが多く、ポップスでもよく用いられています。

【ポップスでの楽曲例】
・HANABI / Mr.Children
・風になる / つじあやの
・ロマンスの神様 / 広瀬香美
・歌うたいのバラッド / 斎藤和義
・ダンスホール / Mrs.GREEN APPLE
・花の搭 / さユり


また、ジャズでは常套手段になっており、異なる楽曲でも同じパターンが使用されることが多々ありますね。

【ジャズでの楽曲例】
・Take the A Train / Duke Elington
・All of me / Frank Sinatra
・There Will Never Be Another You / Chet Baker
・But not for me / Chet Baker…

ドッペルドミナントの響きの性質

響きの性質としては、ダイアトニックコードであるⅡmがⅡ7になるので、通常のⅡm-Ⅴ7-Ⅰ進行と比較して明るく力強い印象になる気がします。


スピッツの「空も飛べるはず」という楽曲では、『歌詞:そらも飛べるはず….』のフレーズで使用されており、歌詞とリンクしているような印象があります。また民謡「翼をください」という楽曲においても『歌詞:翼が欲しい…』というフレーズで使用されています。

空を題材にした楽曲を例に出しましたが、ドッペルドミナント(ダブルドミナント)は非常に力強い響きがするため、”大きく前に踏み出す””ポジティブ”な印象を表現するために使用されているといえそうです。

また、ポップスにおいては、3和音で登場することも多々あります。厳密にいうとドミナント(○7)ではないのですが、同じような効果が得られるためだと考えられます。

マイナーキーの使用例について

ドッペルドミナントはマイナーキーの楽曲でも登場します。この場合は、結果的にマイナーキーの2番目のコードであるm7♭5がⅡ7に置き換わる形となり、そのまま5度進行して主和音に着地します。


【ポップスでの楽曲例】
・Flamingo / 米津玄師
・サウタージ / ポルノグラフィティ

ポップスでよく使用されるパターン

楽曲で使用されるパターンについてもうすこし詳しくみていきます。

Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ

よく見られるのが冒頭でも紹介したⅡ-Ⅴ-Ⅰのパターンです。特に、サビに入る直前など、パートの繋ぎ目で使用されることが多く、起承転結の「結」のフレーズに相性が良いと考えられます。

これは、ドッペルドミナントの響きが”楽曲の盛り上がりに向かう感覚”や”次のフレーズに向かう感覚”とマッチするからだともいえそうですね。

・空も飛べるはず / スピッツ 『サビ:君と出会った….』


・風になる / つじあやの『サビ:君となくした….』

・歌うたいのバラッド / 斎藤和義『Bメロ:いつもなら照れくさくて…』

Ⅱ-Ⅴ-○(主和音に解決しない)

一方、続くドミナント(Ⅴ)から主和音に解決しないパターンもあります。これはコード進行的には裏切られたようなコード進行になるので、独特の響きが得られると思います。

・HANABI / Mr.Children『イントロ』

この楽曲の場合は、E♭7→A♭sus4(Ⅱ7→Ⅴsus4)の流れからF(Ⅲ7)に進行する形になり、裏切られるコード展開になっています。

・花の搭 / さユり(サビ:帰ってくることは…)

この楽曲もB7/D#→E(Ⅱ7/#Ⅳ→Ⅴ)の流れから、非和声音のC#(Ⅲ)に進行しており、裏切られた形になります。

Ⅱ-○-○

ポップスでは、Ⅱ7からドミナントに繋がらないパターンがあります。これをドッペルドミナント(ダブルドミナント)と呼ぶかどうかはかなり微妙なのですが、そのようなコードとして紹介されることがあるので触れておきます。

・楓 / スピッツ『Aメロ:時が流れても…』

B♭7(Ⅱ7)の次にサブドミナントであるD♭(Ⅳ)に進行するパターンです。続くコード進行であるE♭(Ⅴ)を「D♭→E♭(Ⅳ→Ⅴ)」に分解したものと考えると、ドッペルドミナントと言えるかもしれませんね。

・ありがとう / いきものがかり『サビ:つながれた右手は…』

これは、D7(Ⅱ7)を経由してそのままDm7(Ⅳm7)に進行しています。かなり拡張して考えないといけないですが、続くコード進行を分解したものと考えると、ドッペルドミナントと言えるのかもしれません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

ドッペルドミナント(ダブルドミナント)の使い方について見てきました。ジャズはもちろんのこと、ポップスでもよく使用されていることがわかるかと思います。


ダイアトニックコード以外のコードなので、特別な意図があるときに使用されていることが多いのかもしれませんね。


参考になれば幸いです。


では!


ABOUT ME
だっとさん
ピアノ、ギター、作曲をする音楽家。ポップス、ロック、アニソン、ボカロなどの楽曲分析、音楽理論、DTM、ギター機材関連の情報を発信! Youtubeでも動画配信しているので見てね!

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