Official髭男dismの『CryBaby』です。TVアニメ『東京リベンジャーズ』のOPテーマとなっています。
Vocal&作詞・作曲の藤原さん言わく、やりすぎの問題作となっているようですが、どのような楽曲なのでしょうか。
では、いきましょう!
(転調については記事後半でまとめて解説しています!)
イントロのコード進行
イントロは、Key:Gm(♭2)です。
何かが始まるような物騒な雰囲気がしていますね。分数コードが多用されていますが、コードが聴き取りにくいので参考程度にしてください。
最後のDコードはGハーモニックマイナーダイアトニックコードのⅤとなっています。いきなり明るいコードなのでびっくりしたのではないでしょうか。
ハーモニックマイナーダイアトニックコードでは、ドミナント(Ⅴ)がメジャーコード(or セブンス)になります。
Aメロのコード進行
イントロが終わってすぐに転調します。Key:Fm(♭4)ですね。
(※低音部が目まぐるしく動いているので、主要コードだけ記載しています)
2小節目のDm7(♭5)がダイアトニックにはないコードですが、これは前のコードのFmにD音を足すだけで出来上がりです。
ピアノで弾くと左手を移動するだけなので演奏面からメリットがあります。
最後のGm7(♭5)→C7/Eという進行は次の小節に繋がるツー・ファイブ進行(Ⅱm-Ⅴ)です。このコードの差し込み方はまさしくジャズのアプローチ。
作曲の藤原さんの音楽背景がよく現れていると思います。ちなみに『Pretender』や『Universe』でもこういった使い方がよく見られますので参考にしてください。
Bメロのコード進行
Bメロでも転調していて、Key:F(♭1)です。同主調の転調が使用されていますね。
いきなり美しいメロになるので「転調した!」というのは分かりやすいのではないでしょうか。
Aメロとは打って変わって明るい雰囲気を持ったコード進行が繰り返されています。
最後のGm7→A7→DもⅣ→Ⅴ→Ⅰという典型的なメジャー系進行です。先程、BメロはKey:Fと言いましたが、これによってKey:Dの世界の雰囲気も漂わせています。
次はサビに向かうコード進行。やはりサビに向かうコードは上行進行ですね。
G#dimはパッシングディミニッシュ。前後のコードをつなぐ役割をするコードです。これが案外手軽で扱やすいコードで、何も考えずに差し込むだけでも少し変わった雰囲気を演出できちゃいます。
サビのコード進行
またしてもサビで転調。Key:Dメジャー(#2)になっています。
コード進行は非和声和音が使用されていて非常にややこしい。少し聴き取りにくかったので参考程度にしてください。
コード進行の合間に、ツーファイブワン進行を差し込むという、Official髭男dismに特徴的なコード進行です。
サビの途中部分でまた転調。半音下のKey:D♭(♭5)になっています。
最後のコード進行は少しキャッチーですね。前半部分はダイアトニックコードに沿った進行になっています。
後半のG♭▵7→A♭→B♭というコード進行は、G♭▵7→A♭という流れでで主和音のD♭(Ⅰ)で終わるかと思えば、最後B♭(Ⅵ)で終わるという『偽終止』という奇想天外なコード進行となっています。
ラストサビでも目まぐるしく繰り返される転調
ラストサビの部分も見ておきましょう。Key:D(#2)→Key:D♭(♭5)→Key:E(#4)→Key:D♭(♭5)という流れで終わりです。
楽曲の転調について
この楽曲で話題になるのはやはり転調の多さでしょう。
イントロからラストサビまで合計10回の転調が行われています。全体の流れをまとめるとこのような感じです。各パートごとに転調しています。
転調を繰り返しているのにも関わらず、なぜ楽曲崩壊しない?
では、なぜこれほどまでに転調を繰り返しているのに、楽曲としてのバランスを保てているでしょうか。
それはデタラメな転調ではなく、わりと『関係のある調同士の転調が繰り返されている』からです。
この楽曲で使用されている転調を大まかに分類すると、①短3度(±3)②半音(-1)③全音(-2)の3つで、特に短3度が多くなっています。
- 短3度(±3)
- 半音下(-1)
- 全音下(-2)
全音や半音は位置が近いことから、なんとなく関係があるのはわかると思いますので、短3度について詳しく説明します。
短3度の転調:同主調&平行調の関係
この楽曲のポイントとなるのは短3度(±3)です。この性質を一言めで言うと『平行調と同主調の関係をつなぐ音程』になります。
例えば、Key:F→Key:D(Bメロ→サビ)の転調では、『Key:Fの平行調の同主調がKey:Dになる』ということです。
また、Key:D♭→Key:E(ラストサビ)の場合は『Key:D♭の同主調の平行調がKey:Eになる』ということになります。
このように、平行調と同主調を辿っていくのに重要なのが短3度という音程なのです。なので、音楽的にはこの短3度はかなり重要とされているんですね。
このことから『CryBaby』では比較的、関係性のある転調繰り返しているので、全体的としてはバランスを保てているわけなのです。(それでもやりすぎ感はありますが…笑)
まとめ
いかがでしたでしょうか。
問題作というだけあってかなり挑戦的な楽曲でしたね。目まぐるしい転調が繰り返されているので弾くのはなかなか骨が折れるかと思います。
この記事で紹介したように各パートのキーを整理しておくと弾きやすくなるかもしれません。
参考になれば幸いです。
では!
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リリースから日も経たないのに詳細な解析をありがとうございました。本作品は難解ですが、音楽理論的には整合が取れているという説明に納得がいきました・・・サビ前半の転調はやはり意味が分かりませんし分かる人はいないかもしれませんが、全体としての整合という点ではごもっともと思います。
この曲には記事で指摘されていない小さなトリックがあります。冒頭のみ登場するGmにも明確な理由があり、1曲リピート再生したときにラストサビの偽終始のB♭から短三度下転調でスムーズに繋がります。
以下は解釈になります。この曲がリピート再生を含めて考慮され、奇妙な転調を何度も経て、メロディは類似の音型を繰り返し、明るい(偽)終始に向かうのは、アニメ主題歌であるこの楽曲の原作漫画である「東京卍リベンジャーズ」へのバンドメンバーの敬意と思い入れを表しており、歌詞からもそれは示唆されるのではないでしょうか。原作のテーマである時間遡行と改変を音楽的に表現した大変な意欲作であり、難解ながらも本作が飛躍してくれるといいなと思います。
お返事遅れてごめんなさい。コメントありがとうございます!タイアップ作品を表現した楽曲構成になっているんですね。非常に興味深いです…。
きき