前回の記事では、スケールやコードがどのようにしてできたかということを説明してきました。
そこで論点となったのが『純正律』と『平均律』です。
自然現象の美しさという観点からいうと『純正律』に軍配があがるわけですが、現代ではなぜ『平均律』が使用されているのでしょうか。
今回は『平均律』がどういうものかということを説明したうえで、それらの響きの違いについて体感していきたいと思います。
では、いきましょう!
現代の音楽は濁りの音楽か?
前回の記事で説明した『純正律』の周波数と音程の関係は以下の通りでした。
そこでは、”全音の間隔にズレ”が生じているという問題がありましたね。
では、その何が問題なのかというと「転調」したときに起こります。
例えば、純正律の基本の音(ド)をそのまま「レ」にずらしたとしましょう。
すると、「レ」から「ミ」の間隔が狭くなるので、ずらす前の音階の響きとは勝手が違って来てしまいますよね。
これでは実用性にかけるわけです。それは特に演奏のときです。
ピアノなどの演奏中に再チューニングが出来ない楽器では、基音を変更することができないので、転調すると音階がズレてしまうという問題が発生しますよね。
なので、昔の人は「演奏の利便性と物理学な的な美しさ」のどちらをとるかということを迫られたわけです。
その葛藤の末、開発されたのが『平均律』というものです。極端な言い方をすると「妥協の末につくられた音律」というわけですね。
ただ、そのおかげで転調や移調が自由になり、幅広い表現ができるようになったというメリットもあるため、現代では多くの場面で『平均律』が採用されています。
※純正律は3和音が前提で作られた音律なので、4和音にしてしまうとあまり綺麗に響きません。したがって、現代のような複雑なハーモニーが発展するためには、平均律の方が理にかなっていたといえます。
平均律とは?
『平均律』というのはものすごーく簡単です。
要は「音の間隔を全て同じにすればいいわけですから、オクターブ音を12等分してやればいい」わけです。
イメージが伝わりやすいように12等分といいましたが、音程はかけ算で変化するので、半音上がる度に2の1/12乗倍(2の12乗根)してやる必要があります。
そうしてできたものが『平均律』です。これで、皆さんが知ってる音階の完成ですね。
物理学的な規則性から半ば無理やりにつくったため、完全な調和とは言えませんが、「まぁちょっとぐらいええやろ。」という感じです。
『平均律』と『純正律』の周波数を比較してみると以下のようになります。
『純正律』ではキリのいい数字になっていますが、平均律では小数点が出現し、少しずつずれているのがわかるかと思います。
平均律と純正律の響きの違い
では、最後に『平均律』と『純正律』の響きの違いを聴き比べてみましょう。
「こんだけ言うなら純正律ってすごい綺麗なんだろ!」
と思うかもしれませんが、人によってはあまりよくわからないかもしれません。まぁ、一度聴いてみましょう。
純正律の音階
平均律の音階
純正律の和音
平均律の和音
※Cubase付属のHMTという機能で純正律化しています。(純正律っぽいという感じです)
シンセサイザー等を用いたもっと正確なやり方の動画もありましたので参考にしてみてください。
どうでしょうか。感覚的になんとなくわかる….という感じでしょうか。生まれたときから平均律の音楽に耳が慣れてしまっているので、平均律の方がしっくり来るという人もいるかもしれません。
ただ、人間の耳の鼓膜や体内を構成している水分などは純正律の方を喜んでいるのかもしれませんね。
純正律の音楽はリラックス効果がある(?)とも言われています。”原始に帰る”というかそんな感じかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
前回の記事と今回で、音楽の根っこの部分について話してきました。
こう考えてみると、音楽というのは物理的な観点と数学的な観点も取り入れて構築されてきたと言えますね。
知っていてどうこうというものではないですが、音楽理論の深い理解につながるので、参考にしてみてください。
では!