King Gnuの「三文小説」の楽曲分析です。土曜ドラマ『35歳の少女』の主題歌にもなっており、ポップスでは珍しくかなり壮大な楽曲展開になっています。
では、いきましょう!
楽曲のコード進行
この楽曲はキー:Eマイナー(ホ短調)です。マイナーキーは馴染みが薄いと思いますので最初にダイアトニックコードを紹介しておきます。調号は#1つですね。
Eマイナーダイアトニックコード
マイナーダイアトニックコードを順番に表記するとこちらになります。メジャーでは馴染みがない「♭Ⅲ、♭Ⅵ、♭Ⅶ」という表記が登場します。
また、クラシック流派では下記のように「♭を省略して表記することがある」のでこれも参考にしてください。今回の記事では上の表記方法でいきたいと思います。
Ⅰm-♭Ⅶ-♭Ⅵ-♭Ⅲ/Ⅴ-Ⅳm(Aメロ)
楽曲冒頭の部分(Aメロ)。井口さんの歌声が綺麗でびっくりしますが、コード進行も印象的な動きになっています。これでもかというぐらいきれいな順次下行になっています。
Ⅳm-Ⅴ-♭Ⅵ-♭Ⅶ(Aメロ)
Aメロの続きの部分。この進行ではBコード(Ⅴ)がポイントになります。
このコードはマイナーダイアトニックコードにはないコードですね。しかし、マイナーダイアトニックコードには「他に2つのダイアトニックコードがある」ということについて説明しておきます。
それが下記の「ハーモニックマイナー(和声的短音階)」と「メロディックマイナー(旋律的短音階)」になります。ここで重要なのはハーモニックマイナーで”和声的”というだけあって「和音の響き」に特化して開発されたもなのです!
いろいろ難しいコードですが、重要なのは「Ⅴm(Bm)がⅤ(B)になっている」ということです。
「待てよ。どうして、こんなことになるんだ!」ということなのですが、これは「ドミナント(Ⅴ)→主和音(Ⅰm)」の解決感が通常のマイナー(ナチュラルマイナー)では弱いからですね。
聴いてみると違いは歴然。
・Ⅰm→Ⅴm→Ⅰm:Em→Bm→Em
(ナチュラルマイナー進行)
・Ⅰm→Ⅴ→Ⅰm:Em→B→Em
(ハーモニックマイナー進行)
やはり「ハーモニックマイナーのほうがドラマティックで強烈な響き」がしていますよね。昔の人はこちらの響きを好んだのです。そこで開発されたのがハーモニックマイナーコードです。この楽曲では一貫してハーモニックマイナーの「Ⅴ→Ⅰm」という動きが使用されています。
♭Ⅵ-Ⅴ-Ⅰm-Ⅳ(Bメロ)
ここのBメロ部分がなんとも美しい。3和音が連続していて重苦しい感じと井口さんの高音の歌声とのコントラストが素晴らしいと思います。
♭Ⅶm-♭Ⅰ-♭Ⅳ-♭Ⅲ(Bメロ)
Bメロの続きの部分。ここの部分は非常に印象的なコード進行になっています。”ダイアトニックコードにはない”コードが連続していてかなり妙な響きをしていますね。
このコードがどこから来たかというと、「同主調マイナーの借用和音」というもの。すべてGマイナーダイアトニックコードに存在するコードとなっています。遠回りですがイメージはこんな感じ。
「平行調」の「同主調」という考え方になります。これらの調性関係は「近親調(関係調)」と呼ばれており、かなり重要なので覚えておくといいかもしれません。
Ⅰm-Ⅴm/♭Ⅶ-♭Ⅵ-(Ⅳ-♭Ⅱ)(サビ)
サビの部分です。ここでいきなりリズム感が変わるのが肝ですね。3連符よりのリズムになっており、ガラリと印象が変わります。
ここでのFコード(♭Ⅱ)というのはEマイナーでの「裏コード」と呼ばれるものです。ドミナント(Ⅴ)の代理コードとして使用できるコードですね。ジャズでは多用されるアプローチになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
なかなかいろいろなキー(調)から来たコードが使用されていて複雑なサウンドになっていると思います。決してキャッチ―とは言えない曲調なのがなかなかすごいなぁと思います。(ドラマの主題歌としては珍しいかもしれませんね。)
参考になれば幸いです。
では!
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