今回は、〇7(#9)というコードについてみていきたいと思います。
〇7(#9)とは?
まず、〇7(#9)について見ていきましょう。
響きとしては、非常に複雑で不穏な響き。なかなか扱いにくそうですね。
コード構成音としては「Root、3度、5度、7度、#9th」で、表記通りドミナントセブンスにテンションである#9thの音が加わったコードです。
もう少し突っ込んでみると、#9thという音はルート音に対して♭3rdの関係をしているとも考えることができるため、メジャーとマイナーのどちらの性質を有しているとも言われています。
ただ、皆さんご存知の通り、このコードには特別な呼び方があります。それが「ジミヘンコード」という呼び方。
Purple Haze / Jimi Hendrix
これは伝説のギタリスト「ジミヘンドリクス(Jimi Hendrix)」が多用したことからこの名前がついています。イントロのリフは誰もが聞いたことがありますよね。ジャズの文脈で使用されていたコードを、ロックに取り入れたというところも衝撃だったのかもしれません。
ギターのドライブサウンドもあいまって、ドミナント(〇7)の#9が非常に強烈な響きを放っているのがわかるかと思います。
緊急地震速報も?
不穏な響きの性質は、別の例からも伺えます。それは「緊急地震速報」の警告音にこの構成音が使用されているからです。
(わかりやすい動画があったので載せておきます。)
これは構成音的には、C7(#9)になっており、この5度の音を低音部にもってきた転回形であるC7(#9)/Gという解釈になります。
この警告音では、半音ずらしたコードを交互に鳴らしてしまうので、それはもう危険な感覚がするということになります。
こういった例もあることから、このコードは単純にドミナントセブンス+テンションというだけではなく、何か特別なコードとして認識されているということになります。
〇7(#9)の使い方
では、〇7(#9)コードの使い方についてみていきたいと思います。
1. パートのキメ部分に使用する
このコードの背景から、リスナーにも「あっ、ジミヘンコードだ!」とわからせるようなタイミングで使用されていることがよくあります。
有名なのが「めざせポケモンマスター/松本梨香」という楽曲。
イントロからAメロの繋ぎの部分でこのコードを強調するかのように使用されています。いかにもストラトキャスターのジミヘンサウンドといった感じです。
このような使い方は、Suchmos(サチモス)の「STAY TUNE」という楽曲でもみられますね。
おしゃれなクリーンギターだったところが、このコードを契機にドライブサウンドに変化しており、ロックの文脈が伺えますよね。
ギタリストはもうE7(#9)のみをジミヘンコードと認識している人も多いかもしれません。こういった使い方が実際の楽曲ではよくみられます。
2. 半音ずらして使用する
次は、緊急地震速報のように、コードを同じ形のまま半音ずらして使用するという方法です。
例えば、ファイナルファンタジーⅤの「ビッグブリッジの死闘」がこれを利用した例になります。
中間あたりでジミヘンコードが、C→B→B♭→Aという具合に、半音ずつ下行しているのがわかるかと思います。これは不穏な響きというよりは、フレーズが素晴らしすぎて、もうカッコよくなっちゃってますね。
個人的に好きなSIAM SHADEの「Heaven」という楽曲でもこのような例があります。これは、ギターソロの直前にジミヘンコードを半音ずつ上行していくパターンで分散和音(アルペジオ)で演奏されていますね。
3. ドミナントセブンス+#9テンション
これはもう単純にドミナント(○7)のテンションとして#9thを付け足した”味付け”のような使い方になります。この辺をポップスに上手く取り込んだ楽曲として、オーイシマサヨシの「ようこそじゃパリパークへ」という楽曲があります。Aメロで使用されているのがわかりますね。
この楽曲はやはり分解していくと、いろいろなエッセンスが盛り込まれていて非常に面白い楽曲ですね。以上、紹介した3つの方法として使われることが多いのかなという風に思います。
○7#9(ジミヘンコード)の使用楽曲
阿修羅ちゃん / Ado
めざせポケモンマスターと似た使い方をしている例に、Adoの「阿修羅ちゃん」があります。これは、サビ前に入るコードとしてG#7(#9)が使用されていますよね。
夜咄ディセイブ / じん
この辺の使い方としてはボカロの「夜咄ディセイブ」がそうです。サビ前に使用されています。
ノーダウト / Official髭男dism
F#7 (#9)でいうと、Official髭男dismの「ノーダウト」もそうですね。イントロで使用されています。
今夜はから騒ぎ / 東京事変
この楽曲では、冒頭にこのコードが使用されており、東京事変特有の変態感が出てますね。(笑)。
パプリカ / 米津玄師
シレっと使用されているのがこの楽曲のAメロ部分。米津玄師バージョンは、どこか不穏な雰囲気がありますが、こういったコードをあえて使用しているからかもしれません、
これは、コード進行としてはA7(#9)→A7(♭9)という流れになっており、オルタードの響きを強く感じることができます。
このオルタードスケールは典型的なジャズのアプローチで、ジャズ楽曲のドミナント上でよくみる使用方法になります。
こういったアプローチをパプリカのような雰囲気の楽曲に昇華しているあたり、やっぱりこの人すごいですね。
正しくなれない / ずっと真夜中でいいのに。
これと同じパターンとしては、ずっと真夜中でいいのに。の「正しくなれない」という楽曲です。Aメロで使用されていますね。
これもAメロで、E7(#9)→E7(♭9)という流れで使用されており、コード進行としてはパプリカと似たような雰囲気になっています。
脳漿炸裂ガール feat. 初音ミク / れるりり
この楽曲にもジミヘンコードが使用されています。Bメロはジャズ調の雰囲気になっているのでやはりこういったコードは”ハマり”やすいというのがありますね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、○7(#9)について紹介しました。まとめると、3つの使い方が存在することになりますね。
①楽曲のキメの部分で使用する
②半音進行で使用する
③ドミナントセブンス+テンション
一見するとなかなか扱いにくそうなコードですが、案外、楽曲に多く使用されていることがわかってもらえたかと思います。
参考になれば幸いです。
では!