音楽理論

Jpopっぽいとはどんな楽曲なのか?〜コード進行、メロディの観点から特徴を考えてみる〜

Jpopっぽいとはどんな楽曲か?

「Jpopっぽいとはどういう楽曲か?」について考えてみたいと思います。作曲やアレンジの参考にしてください。Jpopっぽいと言えば、例えばこんな楽曲が思い浮かびます。

・チェリー /スピッツ
・ありがとう / いきものがかり
・ドライフラワー/優里
・もう恋なんてしない / 槇原敬之
・水平線 / back number

など…

メジャーキーの明るい印象がありますが、その中にどことなく感じる悲しさや哀愁というのは非常に日本っぽい音楽の特徴だといえそうです。これらの楽曲を参考にJpopっぽい楽曲を作ってみるとこんな感じになりました。(特定の定番コード進行をあまり使わないようにしています)

確かに何か聴いたことのある感じになり、バラード~ミディアムテンポのJpop定番の響きだと思います。

明るい ⇔ 暗いを往き来する

この表現が良いのかはわかりませんが、日本っぽい音楽の特徴の1つが、明るい⇔暗いの往き来だと考えられます。もっと音楽理論的に表現すると「平行調を行ったり来たりすること」なのかなと思います。平行調というと、Key:CのときのKey:Am、Key:B♭のときのKey:Gmなどをいいます。

コード進行の特徴

さっきの例をざっくり分割してみるとこんな感じになります。中間あたりに平行調であるKey:Amの雰囲気が挿入されており、この部分でグッとくる哀愁感が生まれています。

コード進行は、前半部分がⅠ-Ⅴ-Ⅳのメジャーコードを主体とした前向きな響き。かとおもえば、次はⅢ7からⅥmへとつながり、暗い響きが出来上がっています。

そこから、リディアン由来の浮遊感を持ったD/F#を経由しつつ、Ⅳ-Ⅴのコード進行につながり、元の調に戻っていきます。

このⅣ-Ⅴの部分も、トライアドではなく、F6やGsus4など少しテンション感を持ったコードを用いてゆるやかに元の調に戻っていくのが好まれる傾向にあります。

このような繊細な調性コントロールがJpopの特徴なのではないかと思います。

メロディの特徴

さらに、メロディに着目してください。ほどよく、次の音に向かう導音(半音の動き)が使用されており、これが情緒的な印象を感じさせています。

また、なぜかわからないのですが、6度の跳躍から半音に折り返すようなメロディラインがよく使用されます。

6度跳躍から半音に動くメロディの楽曲例
・ありがとう / いきものがかり
・Subtitle / Official髭男dism
・白日 / King Gnu

など…

このようなメロディラインも情緒的な雰囲気に拍車をかけており、これらの要素を上手く取り入れると、Jpopっぽい楽曲が出来上がりやすいのだと思います。

コード進行の多様性について

もう1つ何といっても欠かせないのがコード進行の多様性・複雑さです。これは海外ミュージシャンの視点から、元メガデスギタリストであるマーティ・フリードマン氏が言及しており、私もその通りだと思います。

Jpopは、コード進行で楽曲を展開していくのが主流であり、そのせいもあってか、コード進行がなかなかに複雑で、1曲の中で使用されるパターンも多いです。それに付随して複雑な転調も多いのでしょう。(そういうわけなので、ある程度、音楽に携わっていないと耳コピすら難しいというのは当然だと思います…)

一昔前のJpop(槇原敬之、松任谷由実、MISIA、aiko、宇多田ヒカル、椎名林檎…)はもちろんその傾向にありますが、最近だと、Official髭男dism、King Gnu、藤井風なんかがそうでしょう。このような楽曲が上位ランキングに上がってくるのはJpopの特徴でしょうし、言い換えれば、リスナーとしてそれらをすんなり受け入れている結果ということに他なりません。

一方、海外はというと、主にビートやループフレーズで展開をつけていく傾向にあります。Jpopでの例をみると「LOSER/米津玄師」や「Overdose/なとり」が典型的な例といえるでしょう。ループフレーズが曲中に何度も使用されているのがわかると思います。

そんなコード進行の複雑性ですが、これも言い換えれば、セカンダリードミナントや、dimに代表されるノンダイアトニックコードを駆使して、平行調などの異なる調を往き来していると考えられます。これは、ジャズのアプローチに近いものがあり、非常に関係性が深いと思います。そもそも、JpopはやたらめったらセカンダリードミナントⅢ7を多用する傾向にあり、これが平行短調につながる架け橋として重要な役割をはたしており、すぐにそっちの世界に行ってしまうのだと思います。

王道進行もこれに近い性質がある?

また、日本音楽のコード進行を語るうえで欠かせないのが王道進行です。ディグリーでいうと、Ⅳ-Ⅴ-Ⅲm-Ⅵmというコード進行。これも短期スパンでメジャーとマイナーを往き来していると考えられます。

普通は、Ⅳ→Ⅴで主和音であるⅠに解決するのですが、Ⅲmに進行して平行短調の主和音であるⅥmに解決するという、唐突なムーブをかましており、これも非常に特徴的なコード進行といえるでしょう。

このように、Jpopとは調を行き来するというのが考えられるのかなと思います。これが哀愁や情緒的な雰囲気を感じさせている1つの要因だと思います。

まとめ


いかがでしたでしょうか。

Jpopの特徴としては、今回取り上げた和声的な内容に限らず、ミックスの奥行き感、言語的な発音など様々な要因があると思います。作曲やアレンジの参考になればと思います。

賛否両論あると思いますが、私は、音楽としてのJpopが好きです。島国特有の閉鎖的な文化体系が引き起こした結果なのかもしれませんが、なかなかに素晴らしいと思います。


参考になれば幸いです。


では!

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だっとさん
ピアノ、ギター、作曲をする音楽家。ポップス、ロック、アニソン、ボカロなどの楽曲分析、音楽理論、DTM、ギター機材関連の情報を発信! Youtubeでも動画配信しているので見てね!

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