今回は米津玄師・ハチさんに着目していきたいと思います。2010「花束と水葬」〜2020年「STRAY SHEEP」までの代表楽曲(他アーティストへの楽曲提供含む)を調査し、使用されている転調手法にまとめて解説しました。
果たして数々のヒット曲を量産し続ける理由の1つになりえるのでしょうか。
では、いきましょう!
動画でも解説しています!
Lemon / 米津玄師
米津玄師の代表曲 8th シングル『Lemon』です。この楽曲では『サビーCメロ』の部分に「キー:Bメジャー(G#マイナー)⇒ キー: A♭メジャー」への転調が使用されています。
これは短3度下で『同主調』の転調ですね。同主調というのは「同じ主音のマイナー⇔メジャーの転調」です。この楽曲の転調契機のコードとしてはセカンダリ―ドミナントであるⅢ7(D#7)です。さらに、そのあとに続くのは6451の小室進行です。J-popで良く使用されるような進行で、転調の後も非常にキャッチ―な感じですね。
LOSER / 米津玄師
5th シングル『LOSER』です。この楽曲では「Bメロ-サビ」の部分に「キー:Aメジャー ⇒ キー:F#メジャー」の転調が使用されています。かなり疾走感が感じられる部分ですね。
この楽曲でも『同主調』の転調が使用されています。転調契機のコードとしては『Lemon』と同じくⅢ7です。そして、その後に続くのは6451の小室進行。全く同じ転調手法が使用されていますね。どうやら、同主調転調においては「転調前のⅢ7から転調後の小室進行」というのが相性が良いようですね。
パプリカ / Foorin(作詞・作曲:米津玄師)
<NHK>2020年応戦ソングとして楽曲提供された『パプリカ』です。この楽曲は「Bメロ-サビ」の部分で「キー:Aメジャー ⇒ キー:F#メジャー」が使用されています。楽曲のキーとしては『LOSER』と全く同じですね。
これも『同主調』の転調です。しかし、注目すべきなのが、メロディの「明日もはれるかな…」に使用されているF#メロディックマイナースケールの音使いです。このスケールは”マイナー”という名前なのですが、構成音でいうとF#メジャースケールと変わりません。
したがって、通常のマイナースケールと比較してかなり明るい印象が感じられ、次のキー:F#メジャーの転調へとスムーズにつなぐことができます。転調契機のコード進行もF#コードからBコードとなっておりドミナントモーションを使用したお手本のような転調手法になっています。
カイト / 嵐(作詞・作曲:米津玄師)
NHKソングとして楽曲提供された嵐の『カイト』です。これも転調部分は「Bメロ-サビ」の部分です。「キー:Eメジャー ⇒ キー:D♭メジャー」の転調となっています。
またしても『同主調』の転調が使用されています。そろそろ米津玄師さんの”作曲者としてのクセ”なんかが見えてきたのではないでしょうか。転調コードとしてはセカンダリードミナントのⅢ7。もはや定番ですね。
砂の惑星 / ハチ feat.初音ミク
ボカロ曲である『砂の惑星 feat. 初音ミク』。ハチ名義の楽曲です。この楽曲も「Bメロ-サビ」の部分で「キー:D♭メジャー ⇒ キー:E♭メジャー」の転調が使用されています。ピアノで聴いてみるとなんとも壮大で美しい。
2度上の『全音上』の転調です。転調コードとしては#Ⅳ7という珍しい感じですが、次のコードであるCmを考えると、ドミナントモーションする形になっています。また、それに続くのは6451の小室進行です。
マトリョシカ / ハチ
ボカロ曲であるハチ名義の『マトリョシカ』です。何とも不思議な雰囲気のする楽曲ですが、ここでも「Bメロ-サビ」の転調が使用されています。「キー:Eメジャー ⇒ キー:Gメジャー」です。
これも『同主調』の転調です。しかし、この場合はEメジャー⇒Eマイナーの同主調転調となっていて珍しいパターンです。ただやはり”同主調転調は最強”なのではないかという気がしてきましたね。転調契機のコードとしてはC#mコード。一度休符を挟んでから、一気に転調するので非常に大胆な印象があります。
後に続くコード進行は436という進行で『Just the Two Of Us進行』に似ています。これも定番ですね。おしゃれコード進行の定番!『Just the Two Of Us進行』について解説する!
迷える羊 / 米津玄師
最新アルバム「STRAY SHEEP」から『迷える羊』です。「キー:E♭メジャー ⇒ キー:Cメジャー」の転調が使用されています。これも「Bメロ-サビ」の転調です。この楽曲は、Bメロまでは混沌としていて、サビでパァーっと開けた印象がする楽曲です。
これは『長3度上』の転調。ただ、この楽曲の転調契機は面白い工夫がされています。ブレイクした時のピアノフレーズがCメジャースケールとなっており、半ば強引な転調ですが、あまり違和感はありません。
ブレイクが非常に効果的に使用されている例ですね。またサビ始まりのコードがGsus4(Ⅴsus4)という浮遊感満載のコードで始まっており、サビでは希望に満ち溢れた感覚がします。
調査結果(まとめ)
2010「花束と水葬」〜2020年「STRAY SHEEP」の代表曲のうち「全7曲」で転調が使用されていました(一通り調べましたが、他にまだあるかもしれません)。「Bメロ-サビ」の導入に転調が使用されているケースが圧倒的に多いです。
・Bメロ-サビ:6曲(LOSER、パプリカ、砂の惑星…)
・サビ-Cメロ:1曲(Lemon)
転調手法としては『同主調』を用いたものが圧倒的に多く(全7曲中5曲)、サビでのキャッチーさを印象づける理由の1つであると考えられます。一方、ポップス定番であるラストサビでの「半音上転調」を使用している楽曲がなかったのがあまり見られなかったのが興味深かったです。
・同主調(短3度下)の転調:4曲(Lemon、パプリカ…)
・同主調(短3度上)の転調:1曲(マトリョシカ)
・全音上(2度上)の転調:1曲(砂の惑星 feat.初音ミク)
・長3度の転調:1曲(迷える羊)
また、同主調転調におけるセカンダリードミナントⅢ7からの6451の小室進行という流れは、楽曲でも多くみられていて相性が良いと考えられます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
米津玄師・ハチの転調楽曲についてまとめてみました。想定していたよりもクリアな結果となり、米津玄師さんのヒット曲の秘訣がわかったのではないでしょうか…。ぜひ、曲作りやアレンジに活かしてみてください。
参考になれば幸いです。
では!
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