スケール(音階)理論

ホールトーンスケール(Wholetone Scale)の解説と使用~幾何学的特殊スケールと使用楽曲について~

ホールトーンスケールとは?

 今回はホールトーンスケール(Wholetone Scale)について見ていきます。ホールトーンとは、”全音”という意味です。したがって、Cホールトーンスケールは音を1つ飛ばしで並べた(ド・レ・ミ・ファ#、ソ#、ラ#)の6音のスケールになります。

 オクターブも含めると鍵盤のちょうど半分の音がCホールトーンスケールに埋め尽くされていることになり、それ以外の音はCホールトーンスケールを半音ずらしたD♭ホールトーンスケールになります。

 このことから、ホールトーンスケールは2種類しかありません。例えば、DホールトーンスケールはCホールトーンスケールの音と共通していますし、E♭ホールトーンスケールはD♭ホールトーンスケールと共通しています。したがって、ホールトーンスケールは楽曲のKeyや文脈に応じて呼び方は変化しますが、結局はCかD♭ホールトーンスケール構成音と一致するということになります。

ホールトーンスケールの特徴

このようにホールトーンスケールは規則性のあるスケールであり、非常に覚えやすくて楽ちんなのですが、楽曲において使用されることはあまりありません。その理由として、このスケール構成音がいずれも等価に感じられ、ふわふわとした、掴みどころがない印象があるからだと考えられます。

 音階に半音隣の音(導音)がありませんから、音の接続が弱く、展開に欠ける特徴があることがわかります。ホールトーンスケールを使っている限り永遠に解決感がありませんので、どうしてもダラダラした展開になるということですね。逆にいうと、このスケールは「浮遊感」「無機質」「神秘的」な印象を与えるのにぴったりな音階であるとも言えます。

 このスケールを多用する音楽家として有名なのがドビュッシー(C.Debussy)です。例えば、「葉ずえを渡る鐘の音で」はすべてホールトーンスケールで構成されている楽曲になります。聴いてみると確かに、メリハリがなく無機質な印象を感じると思います。

 また「Voiles」という楽曲もそうです。これらを聴いてみるとなんとなくホールトーンスケールの雰囲気がわかるのではないかと思います。

ポピュラー音楽における使用

 ポピュラー音楽におけるホールトーンスケールの使用についてみていきましょう。楽曲を通して使用されることはなく、一部のフレーズに登場することが多いです。有名なのが「鉄腕アトム OPテーマ」の冒頭フレーズです。

 ここではB♭ホールトーンスケールを駆け上がるフレーズが登場します。強いてコードをつけるならB♭augとなるかもしれません。

 また、スティービーワンダーの「You Are The Sunshine Of My Life」という楽曲の冒頭部分でも登場していることがわかります。このようにスケールを上行していく飛び道具的な使い方がよく見られるのかなと思います。やはり、ポピュラー音楽に取り入れると明らかにサウンドが異質なのがよくわかると思います。


Blackadder Chordとの関係について

 先ほど出てきた通り、ホールトースケールはaugと深い関係にあると言えます。例えば、Cホールトーンスケールの音を3つずつ積み上げていくと、すべてのルート音に対してaugが出来上がります。


 考えてみるとこれは当然で、ホールトーンスケールは全音で等間隔に音が並んでいる音階なので、全音+全音を構成音に持つaugが、いずれの場合でも出来上がることになります。

Blackadder Chordとホールトーンスケール

 一部の界隈では、分数augとも呼ばれる「Blackadder Chord」でこのホールトーンスケールが登場することがあります。「Guilty Eyes Fever~ラブライブ!サンシャイン!!~」のサビ前「いま、触れたいの…」のフレーズでは連続的にBlackadder Chordが繰り出されており、これがすべてホールトーンスケールの構成音であることがわかります。

 これも一部の界隈では有名な「PUNCH☆MIND☆HAPPINESS~あんはぴ♪OPテーマ~」という楽曲。「PAN-PAN-PUNCH☆MIND….」の冒頭部分で分数augが繰り返されており、これがすべてFホールトーンスケールに含まれることがわかります。

 また、Aメロ部分。「ジャンプしてニッコリ…」あとのオブリフレーズ(木琴:Marimba音源だと思われます)でDaugが登場しており、そのコード上でもDホールトーンスケールのオブリが登場しています。


 このようにaug上でホールトーンスケールが使用できるということを覚えておくと、オブリやアクセント的なメロディ構築に役立つと考えられます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

 今回はホールトーンスケールについてみてきました。非常にシンプルなスケールなのですが、特徴がありすぎるためになかなか楽曲で使用することが難しかったりします。そこで、重要なのがaugです。こaug上で帆0-るトーンスケールを使用されることがたくさんあるということがわかります。

ぜひ、参考になれば幸いです。


では!

音源・ストリーミング


日々の音楽を聴く際にストリーミングサービスはなかなか便利です。流行りの楽曲もまとめて配信されています。

〇Amazon Music Unlimitedでは多くの楽曲が聴き放題
⇒ Amazon Music Unlimited アマゾン公式(無料体験)

関連書籍










ABOUT ME
だっとさん
ピアノ、ギター、作曲をする音楽家。ポップス、ロック、アニソン、ボカロなどの楽曲分析、音楽理論、DTM、ギター機材関連の情報を発信! Youtubeでも動画配信しているので見てね!

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA