今回は、音楽と物理学という観点で話してみたいと思います。
音というのは物理現象なので、もちろん科学的な観点から理論づけがなされています。
かくいう「スケールやコードに代表される音楽理論もこの原理が土台となっている」ことがたくさんありますからね。
今回は、そんな音楽の根っこの部分を探ってみたいと思います。
では、いきましょう。
音の要素:空気の振動(周波数)
基本的に、楽器はラの音でチューニングを行いますよね。
時代や楽器によって多少の差はあれど、チューニングに使用するラの音は440〜444Hzだと思います。
ここで重要なのは、後ろについてる単位。このHz(ヘルツ)というのが、音の「周波数」の単位でこれが「音の高さ」を決定しています。
この周波数がどういう意味かというと「1秒間に何回空気が振動するか」です。弦の振動なんかイメージしてもらうとわかりやすいかもしれませんね。
したがって、ラの音を鳴らしたときは「1秒間に空気が440回振動する」ということになります。
つまり、この空気が1秒間に何回振動するのか?というのが、ド、レ、ミ…といった音程を決定づけているわけですね。
人間の耳はこのとてつもなく速い空気の振動を感じ取って音を認識するという、ものすごーく器用なことをしているわけです。(生命ってすごい…。)
オクターブ上の音は、周波数がちょうど2倍
また、この音をオクターブ上にしたい場合は、周波数を2倍にしてやればいいです。そうすると、オクターブ上(ラ)の音は880Hzということになります。
この原則もかなり重要です。これが、周波数と音程の関係になります。
メジャースケールはなぜ美しく響くのか?
周波数と音程の関係から、スケールやコードなどの美しい響きを考えていくわけですが、ここで重要なのが、音の波形の重なりです。
これが綺麗に重なることで音はうまく調和し、濁りの少ない美しい響きになるんですね。
では、ド(C)の周波数を1とした時に、うまく重なるような波形を見つけてみましょう。すると、単純に周波数を2倍、3倍、4倍、5倍…としていくのが一番簡単そうですね。それらを重ねると波形がピッタリ重なるポイントが多くなります。
1倍、2倍、4倍はいずれもオクターブ違いのドの音ですから、これらの音を同時に鳴らしたときに調和するのは言うまでもないですね。
では、3倍、5倍した音はどうなるでしょう。
実はこれ、「3倍は完全5度のソ(G)の音」になります。そして、「5倍は長3度のミ(E)の音」になります。
さらに、考えてもらうとわかるのですが、これは皆さんが普段弾いてるCコードの基本構成音になっています。
これがコード構成音が決定されている根っこの考え方です。これだけでも「なにこれ、すげーっ!」てなりますが、続けてここから、メジャースケールを作っていきましょう。
完全5度と長3度の関係からメジャースケールを作る
完全5度と長3度の関係がすごく綺麗ということがわかったので、この関係を使ってド(C)の音に対して美しいと考えられる音を考えていきます。
すると、ソ(G)の完全5度上の音であるレ(D)、長3度上の音であるシ(B)が出来上がります。
さらにド(C)の完全5度下の音であるファ(F)、長3度上の音であるラ(A)になります。この時点で7つの音が出揃いましたね。
これら7つの音がメジャースケール(C、D、E、F、G、A、B)です。物理的に規則的な関係から導き出された選りすぐりの精鋭たちです。
ただ、このままではオクターブの音程がバラバラなので、半分にしたり、2倍にしたりしてオクターブ内に音が含まれるように調整して完了ですね。
最終的に、ドの振動数を1とした時の、メジャースケールの音の関係は下表のようになります。
メジャースケールがよく使用される根本的な理由
こうしてできた7音はドを基準とした時に美しい倍数関係から導き出された選りすぐりの音たちです。
したがって、メジャースケールは非常に美しく響くというわけです。これはもはや自然の摂理であらがいようがありません。
現在でも世の中の多くの楽曲はメジャースケールで作られており、人間にとって心地良いとされている理由がこれなのです。
現代の音楽は濁りの音楽か?
さて、最後にこうしてできたメジャースケールの注意点に触れておきたいと思います。
上記の表を眺めてみると少しやっかいなことに気づきます。「ドとレの間隔」と「レとミの間隔」を比べて見てください。
「あれ…違う?」
ドとレの間隔は9/8倍、レとシの間隔は10/9倍になっていますね。これは重大事。言い換えれば「それぞれの音程が違う」ということです。
「いやいや、ピアノの鍵盤ではドとレ、レとミは全音の間隔になっていて、音程は全く同じのはずやんか!」
「おい、いい加減にしろ。どういうことだ?」
そうなのです。実は、我々が普段弾いてる楽器&聴いている音楽というのは、物理的な現象のものから少しずれたものを取り扱っているのです。
語弊を恐れずに言うと「音同士の響きが完全には調和しない、いわば、少し濁りのまじった音楽」ということになります。
「はっ、マジ?」
これには『純正律』と『平均律』というものが大きく関わっています。なんとなく聞いたことはある言葉ではないでしょうか。
少し面白くなってきたところで、今回の話は終わりです。続きは次回の記事にしたいと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
スケールやコードの根っこの部分というのがなんとなくわかってもらえたかと思います。要は、物理学的に規則的正しいものを寄せ集めたのがメジャースケールというわけですね。
知っていてどうこうというものではありませんが「音楽って神秘的だなー。」と思ってもらえればいいと思います。
参考になれば幸いです。
では!