スケール(音階)理論

印象に残るメロディの作り方とは?【コツや手法を理論的に紹介します】

今回はメロディについて話していきたいと思います。音楽理論というと、コード理論といった和声的な要素が強いのですが、メロディも非常に重要な要素です。

「印象に残るメロディの作り方とは?」

今回は、実際の楽曲を例にコツや手法なんかを解説してきたいと思います。

では、いきましょう!

印象に残るメロディとは?

“印象に残る”とは一体、どういう意味でしょうか。

それはズバリ「みんなに覚えて貰いやすい」ということです。言い換えると「記憶しやすいメロディ」「頭にスッと入ってくるメロディ」ということですね。

『キャッチ―』という言葉も似たような意味で使用されることが多いかと思います。

歌モノでは『サビ頭』が重要

ちなみにポップスなどの歌モノでは”サビ頭”が一番重要だといわれることが多いです。

ここで聴衆を一気に惹きつける必要があるんですね。

これはテレビCMやジャケット紹介では楽曲の10~15秒しか使用されないことが多く、短時間で良い曲だと思わせることが必要だからです。



ドラマやアニメのOP・ED曲でも長くて60~90秒程度です。なので「覚えやすいメロディ」というのは歌モノ楽曲では非常に重要だと考えられますね。

インスト・BGMでは必要ないケースも

一方、インストやBGMなどではキャッチ―な要素はあまり必要ないかもしれません。

あくまで映像や人物が重要なのであって、音楽が主役ではありませんからね。したがって、音楽が主張しすぎるのは逆によくないケースもあるのです。



そういう場合は、逆に「印象に残らないような楽曲」を作ってやればよいのです。

つまり、覚えやすいメロディの作り方と”逆”のことをしてやればOK。

なので、どんな音楽を作るのにも役立つといえるのがこのメロディに関する理論だと言えます。

印象に残るメロディの作り方

では、覚えやすいメロディの作り方とはなんなのでしょうか。

これは大きく2つあると考えられます。

それが、①単純であること、②反復フレーズがあることです。

覚えやすいメロディの条件

  1. 単純であること
  2. 反復フレーズがあること



条件①:単純であること

「単純であること」は物事を覚えるうえで非常に重要です。

これは音楽に限ったことではありませんね。

例えば、企業のイメージを表現するためには必ずキャッチコピーをつけますよね。

これはシンプルな言葉で顧客に印象に与えるためです。

長ったらしい文章や難しい言葉使いは誰も覚えてくれませんし、読んでもくれません。

◇タワーレコード『NO MUSIC NO LIFE』

◇ 日立(HITACHI)『Inspire the Next』

◇ファミリーマート『あなたと、コンビニ、ファミリーマート』

◇コスモ石油『ココロも満タンに』

◇キューピー『愛は食卓にある』

◇カルピス『カラダにピース。』


では、音楽でいう”単純”というのは、どういうことなのでしょうか。

いくつか考えられそうですが、以下に例を示してみたいと思います。

音楽でいう単純とは?

  • フレーズが長くない
  • キー(調)のスケール音を使用
  • 頻繁な転調を繰り返さない


他にもあるかもしれませんね。要は聴き手にとってわかりやすいかどうかです。

人によっては「ベタな楽曲だなー」と思うかもしれませんが、ベタは非常に重要なのです。

ジャズや現代クラシックが大衆にそれほど流行らないのは音楽理論的に非常に複雑だからだとも言えます。

ジャズなんかは頻繁に転調を繰り返しますし、色んなスケールを使用するので、聴いていてよく分からないというのが多くの人の感想ではないでしょうか。

ヒット曲の中には、スケール音だけで構成された楽曲がたくさんあります。

要は「シンプル is ベスト」なわけです。これはメロディ作りにも当てはまる法則になります。

条件②:反復フレーズがあること

2つ目は「反復フレーズがある」ということ。

この反復フレーズは音楽理論では「モチーフ(動機・主題)」と呼ばれます。例えば、童謡「春が来た」のメロディなどはそうです。モチーフというのは、全く同じフレーズでなくても構いません。似たようなフレーズであればOKです。

1小節と2小節に全く同じフレーズ(赤)が使用されており、3小節目は違ったフレーズ(青)がありますよね。

また、それ以降のフレーズは最初の音程だけを変更したもので、リズムは全く同じというのがわかると思います。

こういったメロディの作り方が覚えやすいメロディを作るためには非常に有効になるのです。※基となるモチーフから似たようなフレーズを作ることを「モチーフ展開」とも言います。

楽曲を例にメロディの作り方をみていこう

では、実際の楽曲を例にメロディの作り方を見ていきましょう。

クラシックなんかは非常にわかりやすくこのメロディ理論が使用されているのですが、今回はポップスも取り上げてみました。

ベートーベン 交響曲第5番『運命』


ベートーベン 交響曲 第5番『運命』はこのモチーフを活用した良い例ですね。

例えば、冒頭の「ダダダダーン」というフレーズ。よくよく考えてみると同じ音が3回繰り返されているだけです。次の小節ではリズムは全く同じで音程だけが異なるというのがわかるかと思います。

これがモチーフを意識したメロディというものですね。

この楽曲では、このモチーフが曲中で40〜50回も繰り返されており、まさしく反復フレーズというのを意識した楽曲といえるでしょう。

彼こそが海賊 / パイレーツ・オブ・カリビアン

こちらは映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』のテーマ曲です。これはもう冒頭からモチーフの連続です。力強さも相まって1度聴くと頭から離れることはありませんね。

TSUNAMI / サザンオールスターズ

ポップスだと「TSUNAMI / サザンオールスターズ」を見てみましょう。サビの冒頭ですね。音程が下行してくるというフレーズが何度も繰り返されていますよね。


音程が下行する時は「スケール内の隣の音にする」という規則性があります。このようなメカニカルなメロディも印象に残るメロディを作るのに効果的だといえそうですよね。

うっせぇわ / Ado


最近だと「うっせぇわ/ Ado」もかなり単純かつ斬新な反復フレーズが使用されています。
キーの主音であるB(シ)の音をオクターブで繰り返しているだけです「うっせぇ、うっせぇ、うっせぇわ」という歌詞も相まって一回聴いただけでも、忘れることはあり得ない楽曲となるわけです。

まとめ


いかがでしたでしょうか。


今回は、楽曲におけるメロディについて深掘りしてみてきました。

作曲やアドリブでメロディが思い浮かばないという方は案外多いのではないでしょうか。

そんな時はこのシンプルかつ反復フレーズを使用することを意識するといいかもしれませんね。

“ベタ”というのは決して悪いことではありません。ぜひ、このような手法を積極的に活かしてみてください。


参考になれば幸いです。


では!

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だっとさん
ピアノ、ギター、作曲をする音楽家。ポップス、ロック、アニソン、ボカロなどの楽曲分析、音楽理論、DTM、ギター機材関連の情報を発信! Youtubeでも動画配信しているので見てね!