キー(調)理論

転調パターン全網羅!〜使用楽曲、やり方、コード手法の紹介〜【完全保存版】

楽曲にインパクトをあたえる転調。効果的に使用することによって凡曲から名曲へと昇華することもあります。

今回は、「転調パターンを全網羅!」ということで実際の楽曲も交えて、転調方法やコードを解説していきたいと思います。

かなり実践的な内容となっていますので、ぜひ、参考にしてみてください。


では、いきましょう!

転調とは?

まずは簡単に転調(英語:Modulation)について解説していきます。

これは一言でいうと「楽曲のキー(調)が変化する」ことです。

これによって楽曲で使用するコードやスケールが変わるので、転調前とはまったく異なった楽曲の雰囲気を演出することができるんですね。



あと、音楽理論的に重要なことがもう1つあります。それは「調号(英語:Key Signature)が変化する」ことです。#や♭の数のことですね。

コードやスケールが変わるということは、聴き手に新しい音の成分を与えるということですから、「目新しさ」や「刺激的」な印象を楽曲に与えてくれるのは当然です。

さらに、楽曲へのインパクトは「調号の変化が大きければ大きいほど高い」です。

例えば、Cメジャー⇒Dメジャー(#2)よりも、Cメジャー⇒Aメジャー(#3)の方が聴いたときのインパクトは高いんですね。

Cメジャー⇒Dメジャー:インパクト…
Cメジャー⇒Aメジャー:インパクト…


したがって、転調には聴き手に「大きなインパクトを与える」ためのものから「バレずにひっそりと行われる」ものまで様々な種類があります。これは重要な点なので知っておくといいかと思います。

転調パターン全網羅!

では、転調パターンを全て順番に見ていきましょう。いわゆる定番と言われる転調から、少し変わった転調まで様々です。ぜひ、参考にしてください。


※例えば「長7度」の転調は「半音下」とも言うことができます。今回はこの表記で解説していきたいと思います。

半音(+1)の転調

これは最も定番かつ扱いやすい転調ですね。特に、ラストサビで使用されることが多くポップスシーンでの定番手法になっています。

使用されている楽曲は本当に多いです。最近の楽曲だと『白日 / King Gnu』や『うっせぇわ/Ado』などでも使用されています。

Bメロからサビで使用している珍しい楽曲としては『Love so sweet / 嵐』が有名ですね。

使用されている楽曲

○ 白日 / King Gnu
○ Love so sweet / 嵐

転調のやり方、コード手法

King Gnuの『白日』を例に見ていきましょう。ラストサビでD♭メジャー(♭5)→Dメジャー(♯2)へと転調しています。

Ⅲ7というセカンダリードミナントを使用して転調につなげています。ダイアトニックコードに”ない”コードを使用して調性バランスを崩して一気に転調する感じです。

半音上の転調に関しては、妙なコードワークは必要ありません。大胆に転調した方が効果的なことが多いです。

嵐の『Love so sweet』の例も見ておきましょう。Bメロ→サビの部分でBメジャー(#5)→Cメジャー(#0)へと転調しています


この楽曲も使用されているのはⅢ7(D#7)ですね。これは転調前に1小節余分な小節を用意してそこに転調先のⅢ7(E7)が差し込まれるようなパターンです。

このように、セカンダリードミナントを契機として転調に繋げるパターンが多いかと思います。

全音(+2)の転調

これも定番である全音上(+2)の転調です。

調号の変化は2つということで、半音上の転調と比べるとインパクトが少なく、一見すると気づきにくいような転調です。

使用するタイミングはとても簡単。半音上の転調と同じ要領で使用することができます。探してみると案外、多くの楽曲で使用されている転調になります。

使用されている楽曲

○創世のアクエリオン / AKINO
○脳裏上のクラッカー / ずっと真夜中でいいのに。
○プラチナ / 坂本真綾
〇 砂の惑星 / ハチ

転調のやり方、コード手法

創生のアクエリオン主題歌のサビで全音上の転調が使用されています。作曲は菅野よう子さん。この転調が本当に美しいです。

まず、同主調の借用和音である♭Ⅵ/♭Ⅶ(B♭/C)の分数コードを使用してマイナー感を残しつつ最終地点であるⅤsus4(Bsus4)へとつなぎます。

Bsus4というのは転調先のEメジャーのドミナント(Ⅴ)になっていますから、非常にスムーズに転調できます。

また、その前のAsus4(Ⅳsus4)も転調先のダイアトニックコードの一部なので、非常に違和感なく転調につなぐことができますね。

sus4コードという浮遊感満載のコードから、休符を挟んで一旦ブレイク。その後のサビの爆発力。素晴らしい楽曲です。

同主調:短3度上(+3)の転調

短3度上(+3)の転調です。同主調の転調とも言われるキーで音楽理論的には非常に重要な関係調となっています。

後述する短3度下(-3)の転調も同主調なのですが、それとは異なり、こちらはかなり稀なパターンになります。

長調から短調に転調するので、どちらかいうと暗い雰囲気に向かう転調だからというのもありそうですね。使用楽曲としては『誘惑 / GLAY』などが有名。

使用されている楽曲

〇 誘惑 / GLAY

転調のやり方、コード

GLAYの『誘惑』を例に見ていきましょう。Bメロ→サビでDメジャー(#2)→Fメジャー(♭1)に転調しています。

転調契機のコードとしてはお決まりのⅢ(F#)ということで、セカンダリードミナントの3和音が使用されています。

これに至っては、ギターフレーズがブレイクの役割をしているので、それほど転調に違和感はありません。

長3度(+4)の転調

これはまた珍しい転調です。調号の変化としては4つなので転調としてはなかなかのインパクトです。

この転調が使用されるのは本当に稀でそれだけでもかなり変わった印象をうける楽曲になります。

使用されている楽曲

○Butterfly / 木村カエラ

転調のやり方、コード

木村カエラの『Butterfly』を例に見ていきましょう。Bメロ→サビでBメジャー(#5)→E♭メジャー(♭3)に転調しています。

ポップな雰囲気でヒットした楽曲ですが、よく見てみるとなかなか複雑な楽曲ですね。


ここでも活躍するのはセカンダリードミナントです。Ⅶ7(A#7)というのが転調先のE♭メジャーのドミナント(Ⅴ7)になっており、ここから転調につなげていますね。

ちなみにこの曲は他にもコロコロと転調する曲です。イントロからAメロでは、これとは逆に長3度下(-4)の転調が使用されており、サビとは対称的な転調を使用した楽曲になっています。

下属調:完全4度(+5)の転調

この転調は調号が1つ変化するだけなので、転調としてはインパクトが少ないです。

音楽理論的には下属調(英語:SubDominant Key)といわれる関係調でこれも重要になります。

調としては関係の深いもの同士なのですが、ポップスではなかなか使用さていない転調です。

使用されている楽曲

○LIFE / YUI

転調のやり方、コード手法

YUIの『LIFE』という楽曲にこの転調が使用されています。Bメロ→サビで、F#メジャー(#6)→Bメジャー(#5)に転調しています。

これはかなりややこしい。最後のGコードが転調先のBメジャーの平行同主調であるE♭メジャーのⅢになっています。つまり、一度、E♭メジャーの転調を経由していると考えることができるんですね。

また、このE♭メジャーというのは、Bマイナーの平行調でもありますので、サビ前でマイナー感を演出させておいて、実際はBメジャーへと転調するという転調になっているのです。


図で説明とこんな感じですね。細かく分析すると非常にややこしい転調になっています。


増4度(+6)の転調

調が一番遠いところにある転調(遠隔調)で、調号の変化としては史上最大の6つになります。

したがって、楽曲のインパクトとしたはピカイチということになりますね。

うまくやらないと「えっ、この曲大丈夫?」となるような感じもします。楽曲の流れをぶったぎる覚悟で使用するのがこの転調。

使用されている楽曲

○ 明日も / SHISHAMO
○ 行くぜっ!怪盗少女 / ももいろクローバーZ

転調のやり方、コード手法

SHISHAMOの『明日も。』でこの転調が使用されています。まさかのロックバンド。 サビがキャッチーということもありブレイクした楽曲です。

この転調についてはすこし話題になりましたよね。いろいろな解釈があるのですが、重要なのはA→Bというコード進行です。

有名作曲家である中田秀和さんや神前暁さんもこの楽曲に関してツイートされてましたので紹介しておきます

①Ⅲ→Ⅰという流れは割とスムーズ

Ⅲ→Ⅰという流れが違和感がないというのは、コード構成音に秘密があります。これはもう見てもらった方がはやい。



コードのうち2つの構成音が半音に進行する形になっているので、傾性(音が半音隣に進行する性質)が働き、コード進行的には何の問題もない。ということですね。


②短3度上の転調を繰り返したものが増4度である

一方、短3度の転調を2回繰り返すというのを楽譜に記載するとこんな感じです。

一度、C→D(♭Ⅵ→♭Ⅶ)という単純なコード進行を経由すれば転調先のGメジャーにたどり着くことできるのですが、実際にはこのプロセスが省かれたということですね。

つまり、増4度上(遠隔調)は、短3度上(同主調)が2回繰り返された転調というわけですね。


音楽理論的な解釈としては、どちらともとれます。まぁ、真実は作曲者だけが知るところなので、これが音楽理論の面白い部分でもあります。(もちろん、フィーリングのみの可能性もあるということを忘れてはいけません)

属調:完全5度(+7)の転調

これも下属調の転調と同じく、調号の変化としては1つなので、インパクトが少なく気づきにくいです。

音楽理論的には属調(英語:Domimant key)といわれる関係調で非常に密接な関係の調同士になります。

これも転調手法としてはあまり見かけないパターン。

使用されている楽曲

○ 雨とカプチーノ / ヨルシカ
○花ハ躍レヤいろはにほ

転調のやり方、コード手法

ヨルシカの『雨とカプチーノ』を例に説明していきましょう。Bメロ→サビでBメジャー(♯5)→F#メジャー(#6)の転調です。

この転調は結構シンプル。サビ直前のA#(Ⅶ)というコードが転調先のF#メジャーのⅢになっています。

そしてこれがサビの(D#m)Ⅵmにつながるという形になっており、ドミナントモーションを活用した転調になっています。

短6度(+8)の転調

短6度(+8)の転調です。このパターンはなかなか珍しく、使用されている楽曲はなかなか見かけないです。

有名曲としては『Happiness / 嵐』で使用されていますね。ジャニーズやアイドルのような楽曲では歌い手にキーを合わせるために珍しい楽曲が使用されているイメージです。

使用されている楽曲

○Happiness / 嵐

転調のやり方、コード手法

嵐の『Happiness』を例に見ていきましょう。Bメロ→サビでFメジャー(♭1)→D♭メジャー(♭5)の転調です。

Csus4→Cの後に、そのまま進行で半音上のコードであるD♭sus4→D♭が挟み込まれています。

このD♭sus4→D♭(Ⅰsus4→Ⅰ)は転調先のD♭メジャーの主和音(Ⅰ)なので、繋がりとしてはスムーズです。また、サビ始まりのコードがG♭なので、ドミナントモーションするような形になっていますね。

アイドルの楽曲では、歌い手に音域を会わせるため、すこし珍しい転調が数多く使用されます。この辺は作曲家の腕の見せ所でもありますよね。

同主調:長6度(+9)の転調

長6度上(+6)の転調です。短3度下(-3)への転調ともいえますね。

これはポップスではかなりの定番転調となっていて。『同主調』と呼ばれる転調です。これは短調→長調に転調するパターンです。


暗い雰囲気から明るい雰囲気へと転調するので、楽曲の雰囲気をガラリと変えることができ、サビの盛り上がりを演出するにはもってこいの転調といえますね。

使用されている楽曲

○ LOSER / 米津玄師
○ Official髭男dism / イエスタデイ
〇 パプリカ / Foorin
https://www.youtube.com/watch?v=T0valuAksuo
○ サイレントマジョリティー / 欅坂46

転調のやり方、コード手法

この転調は米津玄師がお得意の転調ですね。『LOSER』を例に見ていきましょう。Bメロ→サビでAメジャー(#3)→F#メジャー(#6)へと転調しています。

サビ前のコードにセカンダリードミナントのⅢ7が使用されています。同主調転調にはこれが非常に有効だと思います。

というのも、このⅢ7は、転調先のF#メジャーのⅤ7になるんですよね。したがって、非常にスムーズに転調できるというわけです。

『LOSER』の他にも『パプリカ』『Lemon』『カイト』などにも使用される転調です。これもⅢ7コードが使用されていますよね。

『サイレントマジョリティー / 欅坂46』も見ていきましょう。この楽曲ではBメロ→サビでBメジャー(#5)→A♭メジャー(♭4)の転調が使用されています。

この転調では、Bsus4→Bが転調先のⅢsus4→Ⅲになっているため、そこからドミナントモーションしてサビのⅥm(Fm)に繋げることができます。

ポイントとしては、C#sus4→C#→Bsus4→Bという具合に全音下のコードをそのまま転用している部分になっています。また、8分の7拍子という変拍子なのも重要なポイント。

短7度(+10)の転調

短7度上(+10)の転調です。全音下(-2)の転調ということになりますね。

この辺からはキーが下がる印象をうけるので、楽曲としては”盛り下がる”ような感覚になります。かなり稀な転調で、ポップスではあまり見かけませんね。

使用されている楽曲

〇CHA-LA-HEAD-CHA-LA / ドラゴンボールZ
○ Penny Lane / The Beatles

転調のやり方、コード手法

ドラゴンボール主題歌の「CHA-LA-HEAD-CHA-LA」のサビでは全音下への転調が使用されています。

コードとしては転調前の定番コードであるBsus4。浮遊感満載のコードが使用されているので転調へとつなぎやすいのですが、これに至ってはサビ前のフレーズが重要になっています。

レの音が♮になっているため、ここで転調先のDメジャーに誘引しているわけです。このフレーズによって一気に転調に繋げることができます。

長7度(+11)の転調

最後は長7度(+11)の転調です。こういうとわかりにくいのですが、要は半音下(-1)の転調です。

定番の半音上転調の”逆”というイメージで使用されるのが一般的です。

これも全音下の転調と同じく、キーが下がるような印象を与えるので、何かしらの意図がないとなかなかしっくりこないかもしれません。

使用されている楽曲

○夜に駆ける / YOASOBI
○炎 / LiSA

転調のやり方、コード手法

近年、大ヒットした「夜に駆ける」を例に説明していきましょう。ラストサビ前にこの転調が使用されています。効果としては、”静寂をもたらす”といった感じですかね。

この場合だとコードにお決まりのⅢ7が使用されていますよね。これはもう半音上の転調と同じくそれほどの工夫は必要ありません。

この楽曲はラストサビで大胆に全音上へと転調するので、相対的にラストサビの盛り上がりを演出する効果があります。

まとめ


いかがでしたでしょうか。

これで全部の転調を網羅してきました。最後にザッとまとめておきたいと思います。定番からマニアックなものまで様々です。

ぜひ、演奏や作曲の参考にしてみてください。


参考になれば幸いです。


では!

動画でも解説していますので是非!

参考書籍





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だっとさん
だっとさん
ピアノ、ギター、作曲をする音楽家。ポップス、ロック、アニソン、ボカロなどの楽曲分析、音楽理論、DTM、ギター機材関連の情報を発信! Youtubeでも動画配信しているので見てね!