世間ではまだまだ熱が覚めないウマ娘。ということで今更ながら「うまぴょい伝説」という楽曲について見ていこうかなーと思います。
うまぴょい伝説と転調
「そもそも転調」って何?という方に少し説明しておきます。
転調とは、「楽曲のKey(キー)が変化すること」です。
カラオケなどで「キーが高すぎて歌えねぇ…」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、要はあれのことです。
ただ、音楽の『転調』というともう少し難しいものになります。例えば、今まで「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」という音を使っていたのにも関わらず、いきなり、ラ♭、シ♭、ファ#だとか全く違う音が出てくるという感じです。
聴き手にとっては今まで気持ちよく聴いていたのに、いきなり想像と違う音が出てくるわけですから、「ええええっ!!?」という何ともいえない感覚に陥ることになります。
これは「音楽なんてあんまりわからなーい」という、いわゆる”一般リスナー”にとっても”潜在的な感覚”として起こりうる現象になります。
うまぴょい伝説の魅力の一因
そんな奇妙な感覚を与える転調が、「うまぴょい伝説」にはふんだんに盛り込まれています。それはもうふんだんに…。したがってリスナーにとっては、想像を超える展開の連続です。
これがうまぴょい伝説の醸し出す”カオスさ”や”ハチャメチャ感”はたまた”中毒性”の要因の1つなのではないかと思います。
ということで、今回はうまぴょい伝説の転調に着目していきたいと思います。
また、当該楽曲の作曲家である本田晃弘さん (Cygame) が、お酒を飲みながら作った曲ということで、どれだけぶっとんでいるのかについても理論的な発見があればと思います…。
イントロ→Aメロの転調
イントロはKey:Em(#1)ですが、途中からKey:C#m(#4)に転調しています。出だしのフレーズがそのまま短3度下がるので、ここは唐突に転調したといってもいいでしょう。
さらに、AメロでKey:D♭(♭5)の転調。これも平行調でいうところの短3度下(-3)になっており、先と同じ転調手法になっています。
この短3度の転調は、POPSでは定番の転調になっています。有名なのが米津玄師の楽曲の数々。「LOSER」を初めとして、「Lemom」や「パプリカ」「カイト」などにも使用されています。
イントロ→AメロまでのKeyを5度圏で辿っていくと、右周りに等間隔に回るような感じになり、幾何学的に見てもなかなか面白い展開になっています。
そして、ラップ調の目まぐるしいメロディのAメロを駆け抜けてBメロへと向かいます。
Bメロ→サビの転調
ガラリと雰囲気が変化するBメロですが、この部分の転調ははっきり言って”あほ”です(称賛)。
Keyを見てみると最初のKey:D♭(♭5)→Key:E(#4)で一度、短3度上に上昇します。
そこからまた、Key:D♭(♭5)に落ちてKey:D(#2) に半音ずつ浮上してからKey:G(#1)のサビに繋がります。
図示するとこんな感じ。Bメロからサビに向けてかなり変なルートを辿っています。
普通なら、E→F→F#→Gで一直線にサビに向かえばいいのに…と思ってしまいます。ここがマジで頭を悩ませるポイントです。
ただこれ、Key:D→Key:Gの転調を選択するのもわからないわけでもありません(理論的に考えると)。
というのも音楽は、半音の動きよりも、5度の関係を重んじる性質があります。より親和性があるという感じでしょうか。5度圏をみても隣合うKey同士がこの5度の関係になっています。
さらに、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」と鳴らすよりも、「ド・ソ・レ・ラ・ミ・シ・ファ・ド」と鳴らしたほうがしっくりくるような感覚さえあります。
したがって、この転調は下属調(SubDominant Key)と呼ばれる関係の深い転調。お酒を飲んだ本田さんは、D→Gという5度の関係を好んだのではないでしょうか。やはり、根は音楽家といった感じ。(お酒の気持ちよさより、音楽的な気持ち良さが本能的に刻みこまれているのかもしれません…)
そして、半音ずつ浮上していくというアイデアはそのままにKey:Dに向かっていくという感じです。ただ、やっぱりE→D♭という流れは意味がわかりませんね…笑
うまぴょい伝説の転調まとめ
最後にこれまでの転調をまとめるとこんな感じです。イントロからサビに向かうまでの間に、合計6回の転調が繰り出されています。
目まぐるしい転調から生み出される楽曲展開。やはりこの楽曲にはこれまでのハーモニーの枠組みを超えた特別な魅力があるのかもしれません…。
参考になれば幸いです。
では!