米津玄師の『馬と鹿』です。米津玄師名義では10枚目のシングル曲です。テレビ日曜劇場「ノーサイド・ゲーム」の主題歌にもなっていました。
では、いきましょう!
キー:E♭メジャー
(♭3つ)
Aメロ
2〜3小節目
A♭→B♭→E♭→B♭/D→Cm:Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ→Ⅴ/Ⅱ→Ⅵm
もともとは4516進行です。そこにB♭/Dコードを挿入したという感じですね。B♭/Dにすることによってベースラインが順番に下降していく進行になります。
4516は循環進行と呼ばれるものです。サブドミナントのⅣの部分をⅡmにした2516進行はジャズセッションでよく使用されるコード進行です。
4〜5小節目
F7→B♭→E♭→Cm:Ⅱ7→Ⅴ→Ⅰ→Ⅵm
ここのF7コードですが、ツーファイブワン進行のドミナントセブンス(Ⅴ7)とすると理解しやすいです。
前のコードがCm、次のコードがB♭となっています。そうすると、キー:B♭メジャーのツーファイブワン進行の形になります。 このようにツーファイブワン進行を意識してドミナントコード(○7)が使用されることはよくあります。
Cm→F7→B♭:Ⅵm→Ⅱ7→Ⅴ
キー:B♭メジャーの場合
Cm→F7→B♭:Ⅱm→Ⅴ7→Ⅰ(ツー・ファイブ・ワン進行)
メロディ:「麻酔も打たずに歩いた…」
「麻酔も…」の「も」の部分にFコードの3rd音であるA音が使用されています。
Bメロ
1〜2小節目
A♭→B♭→Bdim→Cm:Ⅳ→Ⅴ→♯Ⅴdim→Ⅵm
dimコードが使用されています。これは経過音ですね。前後のコードを半音で繋ぐことによってスムーズな進行にしています。ちなみに、G7コード(Ⅲ7)も代理コードとして使用することができます。
<補足説明>
もともとは4536の王道進行が基本になっていると思います。本来であればⅢmが使用されるのですが、ここをⅢ7や♯Ⅴdimにすることでよりメロディアスな(エモい)感じを演出することができます。このようなアプローチは丸の内サディスティックで有名なJust the Two Of us 進行の手法が由来(なのではないか..)と思います。
丸の内サディスティック / 椎名林檎【コード進行分析】
3〜4小節目
D♭→E♭→Fm:♭Ⅶ→Ⅰ→Ⅱm
D♭コードはE♭ナチュラルマイナーダイアトニックコードからの借用です。モーダルインターチェンジというやつですね。
メロディ:「冷めきれないままの心で…」
ここのD♭の音もE♭ナチュラルマイナースケールの音(♭7th)です。
5〜6小節目
B♭m→A♭→G7→Cm:Ⅴm→Ⅳ→Ⅲ7→Ⅵm
見落としがちですがB♭mコードが使用されています。これもE♭ナチュラルマイナーダイアトニックコードです。前の小節の部分も含めると、この辺のパートはマイナー調の暗い感じが折り混ざっており、曲のキーが混沌としています。そのため、少し不協和音のような感じがすると思います。
メロディ:「ひとつ、ひとつなくした果てに…」
「ひとつ…」の部分にE♭メジャースケールにはないD♭音が使用されています。E♭ナチュラルマイナースケールの音を使用しています。
「失くした…」の部分はB♭の音がナチュラルになっており、G7コードの3rd音が使用されています。この辺はコード構成音に付随した形になっています。
7〜8小節目
Fm→B♭7→E♭:Ⅱm→Ⅴ7→Ⅰ
ツーファイブワン進行です。ここでしっかりとキー:E♭メジャーの調性感を取り戻しています。
サビ
2〜3小節目
A♭→B♭→Cm→F7:Ⅳ→Ⅴ→Ⅵm→Ⅱ7
Ⅱ7であるF7コードが使用されています。セカンダリダリードミナントです。次のコードにドミナントモーションする形でもないので、あまりよくわかりません。飛び道具的な感じでしょうか。
メロディ:「これが愛じゃなければ何と呼ぶのか…」
「呼ぶのか…」の部分。メロディもF7コードの3rd音であるA音が使用されています。
4〜5小節目
Dm7(♭5)→G7→Cm→C7:Ⅶ(♭5)→Ⅲ7→Ⅰm→Ⅰ7
もう気づいているかと思いますが、ここはキー:Cマイナーのツーファイブワン進行ですね。キー:E♭メジャーの平行調であるCマイナーへと一旦、解決しています。
そして次のC7コードで多少強引に次の小節へと繋げています。
9小節目
A♭→B♭→Cm→Gm:Ⅳ→Ⅴ→Ⅵm→Ⅲm
少し雰囲気が変化する部分ですね。コードの移り変わりが1拍単位になっています。これによって楽曲に疾走感が出ています。
コード進行に関しては、王道進行(4536進行)の3と6を入れかえたものですね。Ⅲmで解決する形になるので、安心するというか安定感のある感じがすると思います。
10小節目
A♭→B♭→Cm→E♭:Ⅳ→Ⅴ→Ⅵm→Ⅰ
前の部分と似ていますが、4561進行に変わっています。
Cメロ
Cメロ全体
Cメロはノンダイアトニックコードや、モーダルインターチェンジが多用されており、楽曲のキーが曖昧になっています。
なので、不協和音を感じさせつつ楽曲が進んでいきます。編曲アレンジ、歌い方も含めてかなり緊張感のあるパートです。圧巻です。
2小節目
E♭m→B♭m→B→G♭:Ⅰm→Ⅴm→♭Ⅵ→♭Ⅲ
この部分のコード進行は全てにE♭ナチュラルマイナーダイアトニックコードが使用されています。楽曲のキーは完全にE♭マイナーに変化しています。
3小節目
Fm7→G7→Cm→D7:Ⅱm7→Ⅲ7→Ⅵm→Ⅶ7
Ⅲ7が使用されおり、次のCmコードに繋げています。キー:Cマイナーと考えることもできます。その場合、Ⅳ→Ⅴ7→Ⅰm(サブドミナント→ドミナント→トニック)という基本コード進行になります。
唐突に出てくるⅦ7ですが、次の小節のGmコードへのセカンダリードミナントと考えるといいと思います。
5小節目
Dm7(♭5)→G7→Cm:Ⅶm7(♭5)→Ⅴ7→Ⅰm
キー:Cマイナーのツーファイブワン進行です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ミュージックビデオの映像もあいまって少し不穏な雰囲気の楽曲でしたね。
音楽的にはモーダルインターチェンジやセカンダリードミナントが多用されていて楽曲のキーが曖昧になっているため、不協和音のような感じがします。これが不気味な感じがする1つの要因だと思います。
あと、個人的に印象に残ったのが、サビあとの間奏(ここでは記載していませんが。)のギターフレーズ。いかにも米津玄師サウンドという感じですよね。
参考になれば幸いです。
では!