コード進行・楽曲分析

千両役者 / King Gnu のコード進行分析・音楽理論の解説!【楽曲分析】

今回は、King Gnuの「千両役者」です。ロックなテイストが押し出されたカッコいい曲ですよね。この曲も現代ポップスではあまり見かけない手法が使用されている珍しい楽曲となっています。


ちなみに「三文小説」の方も解説していますのでこちらを参考にしてください。


では、早速いきましょう!

使用されているコード進行

イントロ、Aメロのコード進行

この楽曲は何と言ってもイントロ・Aメロのこのコード進行でしょう。一見するとでたらめに見えますが、整理していくと「あぁ~なるほど。」という構成になっています。常田大希の高い作曲能力が垣間見える気がします。


まず、ここは1~2小節おきに転調していると考えるといいと思います。すると「Dメジャー→Cメジャー→B♭メジャー」「全音下(-2)」へと下がっていくようになります。そうすると度数表記はこのようになりますよね。


かなりスッキリしたのではないでしょうか。後半部分では「Ⅳ▵7→Ⅰ」という進行が繰り返されています。そもそもなぜ『全音ずつ下がる転調を繰り返すことができるの!?』ということですよね。ここは重要な部分なので詳しく解説していきます。

この手法はジャズをやっている方ならピンとくるのではないでしょうか。例えば、ジャズ・スタンダード曲の「How High The Moon」はこのようなコード進行になっています。(知らない方でも、ジャズではよく使用されるんだな〜ぐらいでOKです)



この場合は「Gメジャー→Fメジャー→E♭メジャー」という具合に転調しています。なぜこんなことができるのかというと、それは「ツー・ファイブ・ワン進行」を使用してごく自然に転調していくことができるからです。


いっそのこと「同じ主音を持つコード(F▵7、Fm7)をまとめてしまったらよくない?」っていうのもアリです。


このように「全音下の転調」というのは、案外扱いやすいのです。この辺はジャズが生み出した音楽理論の探求の成果ですね。非常に合理的で響き的にも自然で美しいです。


このアイデアをロック&ポップス界に転用しているのが「千両役者の冒頭部分」だと思います。


こう考えると「G▵7→F#7」のコード進行はもとは「G▵7→D」という進行だったと言えますね。ただ、ここであえて「F#7」にしているのはコードを半音隣で繋ぐことができるからでしょう。

これは「裏コード」とも考えることができます。これもこの手法の美しい部分ですね。こうしてみると「なかなか考えられているなぁ」と感じるのではないでしょうか。冒頭部分のコード進行はこの曲の肝となっているので是非参考にしてください。

Ⅵm7-Ⅳ△7-♭Ⅶ-Ⅲ7(Bメロ)

Bメロでは転調していますので、キー:Cメジャー(#、♭なし)になっています(転調については後に解説)。

B♭(♭Ⅶ) というのが少し謎ですね。これは『同主調の借用和音』というもの。Cマイナーダイアトニックコードの7番目のコードです。

E7というのはセカンダリードミナントのⅢ7になっています。これもノンダイアトニックコードでは頻出のコードですね。

Ⅵm-Ⅴ-Ⅳ(サビ)

サビでも転調していますので、キー:Eメジャー(#4つ)になります。そう考えると非常にシンプルなコード進行ですね。ダイアトニックコードを下降していく進行。サビとしてはなかなか珍しいコード進行です。

転調手法(Aメロ・Bメロ・サビ)

この楽曲では、多くの転調手法が使用されています。キーをまとめるとこんな感じ。

  1. Aメロ:Dメジャー、Cメジャー、B♭メジャー
  2. Bメロ:Cメジャー
  3. サビ:Eメジャー


Aメロに関しては部分的に転調しているだけなので参考にしてください。では、これについて順番に見ていきましょう!

Aメロ転調:全音下(-2)

この部分はすでに説明していますが、もう一度記載しておきます。「Dメジャー(#2つ)→Cメジャー(#なし)→B♭メジャー(♭2つ)」と「全音ずつ下行」する転調が使用されていますね。

Bメロの転調:全音上(+2)

続いてBメロの転調。これは「B♭メジャー(♭2つ)→Cメジャー(♭なし)」の転調ということで、「全音上(+2)」ですね。

かなり強引な感じの転調になっています。聴いていてもインパクトがある(悪く言えば不自然)と思います。まさしくぶちこんでいるというような感じ。ロック特有のめちゃくちゃでスピード感のある雰囲気が演出されていてアリです。

サビの転調:長3度上(+4)

サビの「Cメジャー(#、♭なし)→Eメジャー(#4つ)」の転調です。「長3度上(+4)」ということでかなり珍しい転調となっています。

ここの転調契機のコードはE7(Ⅲ7)ということで、ダイアトニックコードにはないコードで調性のバランスを崩して一気に転調します。サビでのコード進行もシンプルで一気にキャッチーですね。

まとめ


いかがでしたでしょうか。



なかなか盛りだくさんの内容となってしまいました。あきらかに”普通ではない”ような楽曲となっており、近年まれにみる注目アーティストなのではないでしょうか。この辺も意識して聴いて&演奏してみると面白いと思います!


参考になれば幸いです。



では!

CD、音源ストリーミング




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だっとさん
ピアノ、ギター、作曲をする音楽家。ポップス、ロック、アニソン、ボカロなどの楽曲分析、音楽理論、DTM、ギター機材関連の情報を発信! Youtubeでも動画配信しているので見てね!