コード(和音)理論

神秘的な響き!「四度堆積和音」の魅力〜ジブリ音楽、ジャズ、近代クラシックのサウンド感〜

今回は、すこし変わった和音について紹介したいと思います。 それが「四度堆積和音」というものです。


すごく特殊な響きがするのですが、ジブリ音楽やジャズ、近代クラシックに使われていたりします。


案外、使いどころがある和音ですので、ぜひ見てみてください。 

では、いきましょう!

四度堆積和音とは?

まず、四度堆積和音について説明します。これは見てもらった方がはやいですね。



ルート音から初めて完全4度で積み上げた和音です。ただ、それだけ。かなり神秘的な響きがしますよね。どこまで積み上げてもかまいませんが、3〜5音くらいが一般的です。


これについては、逆に積み重ねると完全5度の間隔になるので、「五度堆積和音」と認識されたりもします。実際の楽曲では、これらが組み合わさって使用されることが非常に多いです。

なぜ神秘的な雰囲気がするのか?

では、なぜこのような神秘的な響きがするのか考えてみます。


コードというのは、本来、3度で重ねるのが基本です。そうすることで、「長3度、短3度」といったコードの性質を決定づける音、「完全5度」といったコードに安定感を増す特性のある音が現れてきます。



一方、この四度堆積和音というのは、そういった”コードの性質”を決定づけるような音がありません


したがって、コードとしては”つかみどころのない”感覚がするコードが出来上がるのです。まさに浮遊感のかたまりです。コード構成音としては○7sus4に似たものになりますから、不安定な感覚がするというのはなんとなくわかるかと思います。

実際の使用楽曲を紹介していく

では、使用楽曲をみていきましょう。一見すると扱いにくそうなコードなのですが、実は多くの楽曲で登場します。

四度堆積和音の代表的な使用例

  1. ジブリ音楽(久石譲)
  2. 近代クラシック(ドビュッシー、ラヴェル…)
  3. ジャズ(モード)

ジブリ音楽の世界

ジブリ音楽を手掛ける「久石譲」さんは、4度堆積和音を多用する傾向にあります。千と千尋の神隠しの「あの夏へ」という楽曲を聴いてみましょう。

冒頭の響きは、ジブリ音楽ではよく聴く響きですよね。 まさしくジブリサウンド!という気がします。

さらにこの楽曲では、テーマ部分の伴奏でも使用されています。そのせいもあってか不思議な世界に連れてこられたような雰囲気がします。



他にも、千と千尋の神隠し挿入曲の「6番目の駅」の冒頭にも使用されています(電車に乗って湯婆婆に会いに行くシーンですね)。さらに、ラピュタの「Innocent(空から降ってきた少女)」など。

また、ジブリではないですが、久石譲さんの楽曲では「Ballade」「Friends」にも登場します。

近代クラシック音楽の世界

クラシック音楽では、近代音楽以降によく使用されている和音です。いくつか代表的な作曲家はいますが、ここではドビュッシーを紹介します。


この作曲家は日本では人気の作曲家で、四度堆積和音をはじめ、かなり浮遊感に満ちた抽象的な雰囲気の作風が特徴です。こちらは「亜麻色の髪の乙女」の中間部分。完全には四度堆積になっていませんが、近い構造になっています。



他には「沈める寺」の冒頭でも使用されています。幻想的な雰囲気にぴったりですね。

ジャズの世界

四度堆積和音はジャズでは”モード”というジャンルで使用されることが多いです。


めちゃくちゃザッくりいうと「ドミナントなどの普通のコードを鳴らしてしまうと、良くも悪くも次の展開が読めてしまうので、使うのやめる」という反骨精神のもとで発展したジャンルです。


マイルス・デイヴィスの「So what」という楽曲が有名ですね。こちらは冒頭のフレーズで、管楽器によってハモッています。



さらにハービー・ハンコック「Maiden Voyage(処女航海)」という楽曲のイントロでも近い響きが使われています。このD7sus4というのはまさしく4度堆積和音に似た響きになります。



まさに調性のない浮遊感に満ちた音楽ですね。この雰囲気がモードというジャンルであり、四度堆積和音の魅力なのです。

ペンタトニックスケールとの関係性

実は、4度堆積和音(5度堆積和音)はペンタトニックスケールと深い関係があります。


ペンタトニックスケールというのは、皆さん知っての通り、メジャースケールの4度と7度の音を省いた5音で構成された音階です。

「どこが4度やねん」という感じですが、この音階の順番を入れ換えたらどうでしょうか。


すると全ての音が完全4度の関係になりますよね。したがって、4度堆積和音というのは、ペンタトニックスケールから出来たコードということもできるのです。


したがって、メロディなんかをつけるときは、ペンタトニックスケールと相性が良いです。「なんかよくわかんね。」という人はペンタトニックの響きとして覚えるといいです。

まとめ


いかがでしたでしょうか。


今回はすこし変わったコードについて紹介しました。普段とは違った雰囲気の楽曲や演奏ができそうですよね。参考にしてみてください。


では!

ABOUT ME
だっとさん
ピアノ、ギター、作曲をする音楽家。ポップス、ロック、アニソン、ボカロなどの楽曲分析、音楽理論、DTM、ギター機材関連の情報を発信! Youtubeでも動画配信しているので見てね!

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