コード(和音)理論

Just The Two Of Us進行はマイナーかメジャーか?という疑問について考えてみる〜平行調が引き起こすキーの曖昧性〜


今回は、かなり質問が多い内容について話していきたいと思います。

それが、近年流行りのJust The Two Of Us進行がマイナーかメジャーかという疑問。いわゆる「キーはどっちやねん!」という話ですね。かなりコアな内容ですが、これについて考えてみたいと思います。

では、いきましょう。

Just The Two Of Us進行

まず、この『Just the two Of Us進行』。日本では『丸サ進行』ともいいますね。Fmaj7→E7→Am7→Gm7→C7という進行で、近年のヒット曲に使用されまくっていて話題(?)となっている進行です。


非常におしゃれな雰囲気で、これだけでもずっと聴いていたい気がしてしまいますね。このコード進行は、ところどころ出てくるセカンダリードミナント(○7)が曲者で、これによってメジャーで解釈するか、マイナーで解釈するかという話が出てきます。

なぜこの疑問が生まれるのか?

そもそもなぜこのような疑問が生まれるのかについて簡単に触れておきます。最大の原因は、音楽でいう「平行調(英:Relative Keys)」という理論にあります。


これは同じ音を使っているのにも関わらず「どの音が主役になるか?」という違いだけで、長調と短調が変わってしまうという理論。

例えば、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」という音階に対して「ド」を主役として鳴らしてみると明るく聴こえますよね。


一方、「ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ」と鳴らすと、暗い雰囲気がしますよね。これが平行調という関係です。


これは理論上そうなっているだけで、無理に扱う必要はないのですが、あえてこの理論にあてはめると「Just the two Of us進行」ってどっちなの?という疑問が生まれるというわけです。

※私は、楽曲分析や音楽理論を理解する場合、基本的にはメジャーキーで解釈します。その理由としては「馴染みがあるし、伝わりやすい」からになります。

メジャー(長調)での解釈

Just The Two Of Us進行をKey:C(ハ長調)で考えるとⅣmaj7→Ⅲ7→Ⅵm7→Ⅴm7→Ⅰ7というディグリーになります。


色々な解釈がありますが、Fmaj7のサブドミナントから始まり、E7というセカンダリードミナント(Ⅲ7)でマイナーのトニック(Ⅵm7)に解決。

さらに、Fmaj7に戻るために、またまたⅠ7というセカンダリードミナントを使用するというものです。(Ⅴm7は、Ⅰ7の補佐的な役割をしているので省かれることもよくあります)

これがメジャーの解釈ですね。

Key:F(ヘ長調)で考えることもできます。「Ⅰmaj7→Ⅶ7→Ⅲm7→Ⅱm7→Ⅴ7」になります。これは一見するとわかりやすいのですが、このディグリーで使用している楽曲がほとんど見られないので、ここでは紹介までにしておきます。

マイナー(短調)での解釈

一方、反対勢力であるマイナー派の意見はこうです。「平行調の主和音であるAm7(Ⅵm7)に解決してるんだからマイナーでええやん」。まぁ、当然こうなるわけです。

つまり、ディグリーとしては「♭Ⅵ→Ⅴ7→Ⅰm7→♭Ⅶm7→♭Ⅲ7」になります。


確かにこちらの場合は、3つ目のコードで一旦、主役のコード(Am7)に着地しているわけですからわかりやすいです。そして、最後の♭Ⅲ7というのは、次に向かうためのドミナントですね(♭Ⅶm7は補佐的な役割)。

または、同じくマイナー系であるAフリジアンモードからの借用和音という解釈が一般的だと思います。

じゃあ結局どっちなの?

じゃあ「結局どっちなの?」という話ですが、由来の『Just the two Of us』という楽曲に則すならマイナーが正解なのではないかと思います。

なぜなら、これがKey:Amで想定して作られた楽曲だと考えられるからです。試しにメロディを見てみましょう。

フレーズ終わりがA音で終止していることが多いですね。したがって、この楽曲の”主役の音”はA音。アレンジもマイナー調のアレンジな気がします。つまり、このコード進行が”短調の楽曲で使用されている”といえます。

一方、このコード進行は、”丸サ進行”という名前でも知られています。では、丸の内サディスティックはどうでしょうか。どうも主役の音は、C音の気がします。したがって、ここでは“長調の楽曲でが使用されている”ことがわかりますね。

結論:使用されている楽曲に依存する

わかっている人にとっては、当たり前のことなのですが、コード進行の解釈は楽曲によって変わると言わざるおえません。(結局、これが言いたかっただけです)。

なので、コード進行だけをみてマイナーかメジャーかというのは不毛というわけです。ただ、1つ言えることはこのコード進行は、J-POPの世界ではメジャーの楽曲で使用されることが多い傾向にあるということです。

例えば、「夜に駆ける」「キリトリセン」「I Love…」などは、メジャーキーの楽曲だと言えます。

どうやら、メジャーの楽曲で使用すると「なんかめちゃくちゃハマる…」という発見が日本のクリエイターの中であったのかもしれません。

参考までにメジャーキーとマイナーキーの楽曲をまとめてみるとこんな感じ。(※あくまでメロディやコード進行傾向から想定した楽曲全体のキーです)

Key楽曲の例
メジャー(Major)・丸の内サディスティック / 椎名林檎
・夜に駆ける / YOASOBI
・キリトリセン / 40mP
・I LOVE… / Official髭男dism
・キラーボール / ゲスの極み乙女
・春を告げる / yama
マイナー(minor)・Just The Two Of Us / Grover Washington
・うっせぇわ / Ado
・愛を伝えたいだとか / あいみょん

したがって「同じコード進行でも楽曲によって解釈が異なりますよ」という結論になります。

ということで終わり!

ちなみにコード進行のみに着目するのであれば、一時的に転調していて、セカンダリードミナントを起点としてキーが頻繁に切りかわっている。という解釈が一番スマートでないかと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

すこしマニアックな内容でしたが、これと似たような質問がかなり多いので取り上げてみました。

この平行調という理論はけっこう曲者で、曖昧なことも多いんですよね…。

また、機会があればこれについてもお話していきたいと思います。

参考になれば幸いです。

では!

ABOUT ME
だっとさん
ピアノ、ギター、作曲をする音楽家。ポップス、ロック、アニソン、ボカロなどの楽曲分析、音楽理論、DTM、ギター機材関連の情報を発信! Youtubeでも動画配信しているので見てね!

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