今回は、セカンダリードミナントという理論について紹介したいと思います。楽曲にスパイスを加える、いわゆる”エモく”するときに有用な方法ですので、この際に覚えてみてください。
では、いきましょう!
セカンダリードミナントとは?
セカンダリードミナント(2次ドミナント)という大層な名前が使用されていますが、なんてことはないんですね。簡単にいうと「ダイアトニックコードを○7コードにした」ものになります。
例えば、Cメジャーを例に挙げるとこのようになります。※Fコード以外の○7コードです。理由は後ほど説明。
とてもシンプルですよね。したがって、楽曲のキーがCメジャーの時は、これらのコードがセカンダリードミナントとして使用することができます。(G7コードは、もともとドミナントコードなので、セカンダリードミナントとは呼びません)
セカンダリードミナントの成り立ち
そこまで重要ではありませんが、頭を整理するためにセカンダリードミナントの成り立ちについて説明しておきます。
本来、セカンダリードミナントというのは、ダイアトニックコードに対するドミナント(Ⅴ7)として生まれた理論です。コードというのは一般的な性質として、ドミナントから4度下のコードに進行する性質があるんですね。これは、聴いたことがあるのではないでしょうか。(“お辞儀のコード”というやつです。)
つまり「4度下進行って最強だから、とりあえずダイアトニックコードの前に置いてやればよくね?」っていう発想なんですね。
すると、以下の7つのセカンダリードミナントが生まれると思います。
「あれ?さっきと違うくない?」と思う方は正解です。これだとF#7というCメジャースケール以外の音をルート音にもつコードができてしまうんですよね。(そもそもBm(♭5)は、特殊なコードなので、”お辞儀のコード”の性質にはあてはまらない)
これはこれで使い勝手が悪いので、通例ではセカンダリードミナントとして省くことになっています。
また、この理屈からできているので、ダイアトニックコードで唯一、4番目のF7コードが存在しないというのも納得できるのではないかと思います。
セカンダリードミナントの使い方
では、セカンダリードミナント使い方についてみていきましょう。大きく2つに分類されます。
- 4度下に進行(ドミナントモーション)
- それ以外のパターン
①4度下に進行(ドミナントモーション)
これは、セカンダリードミナントの成り立ちを考えれば当然の使い方になりますよね。ドミナントモーションするので、どこか力強い感じ、楽曲での”聴きどころ”のようなものが作り出せます。
例1) E7→Am(Ⅲ7→Ⅵm)
例2) Gm→C7→F(Ⅴm→Ⅰ7→F)
②それ以外のパターン
セカンダリードミナントの成り立ちには反するのですが、実際の楽曲では4度進行以外のパターンで使用されることもあります。期待とは違うコードに進行するわけですから、どこか騙されたような不思議な感覚がすると思います。
例1) A7→F(Ⅵ7→Ⅳ)
例2) D7→Em→F(Ⅱ7→Ⅲm→Ⅳ)
セカンダリードミナント使用楽曲の例
では、これまで紹介してきたセカンダリードミナントについてそれぞれ見ていきましょう。使用楽曲についても紹介しますので聴いてみてください。
Ⅰ7について
これはⅣに繋がるドミナントコード。王道進行などのⅣから始まるコード進行はかなりたくさんありますので、これの前に置いてやればまた違った雰囲気を醸し出すことが可能です。
- 王道進行
- ポップパンク進行(4156)
- Just the two of us進行
使用されている楽曲
・春を告げる /yama(Aメロ、Bメロ、サビ)
yamaの春を告げるにも使用されています、非常にカッコイイ曲ですよね。Aメロ、Bメロ、サビなど楽曲の随所にⅠ7が使用されています。楽譜としてはAメロを紹介していますが他にもたくさんあるので探してみてください。
・夜に駆ける / YOASOBI(Aメロ、Bメロ、サビ)
・ハレ晴レユカイ(イントロ、サビ)
Ⅱ7について
これはⅤに向かうコードですね。「ドミナントに向かうドミナント」ということで、特別に”ダブルドミナント(ドッペルドミナント)”という名前がついています。ドミナントが連続する進行になるのでやはり力強い印象を受けるのがこのⅡ7になります。クラシックでは定番手法。
使用されている楽曲
・空も飛べるはず / スピッツ(サビ)
サビの「空も飛べるはず…」という部分で使用されており、まさにどこまでも羽ばたいていけるような力強さを表現する場面で使用されています。シンプルな曲ながらもここぞという部分にセカンダリードミナントが差し込まれている素晴らしい楽曲だと思います。
・卒業写真 / 荒井由実(Aメロ)
・Take The A Train(JAZZ)
Ⅲ7について
Ⅲ7は、セカンダリードミナントで最も使用頻度の高いコードになります。Ⅵmに向かうコードということで、平行調マイナーの主和音(Ⅰm)に繋げることができます。
また、Looser/米津玄師に代表される同主調への転調の際の使用頻度も多いのが特徴ですよね。定番コード進行のJust the Two Of Us進行などでも使用されています。したがって、このコードは一番に覚えるべきコードになります。
使用されている楽曲
・Looser / 米津玄師(サビ前)
Looserのサビの転調前で使用されています。Lemonと並んで同主調転調の有名な例ではないでしょうか。これらの転調契機のコードとして頻用されるのがⅢ7です。
・Lemon / 米津玄師(Cメロ前)
・Pretender / Official髭男dism(Aメロ、Bメロ、サビ)
これも有名曲ですね。「予想通り…」のハイトーンになる部分で使用されています。Bメロ、サビなどにも散見されており、非常に使い勝手の良いコードというのがわかると思います。
Ⅵ7について
Ⅱmへと繋がるセカンダリードミナントということで、ツー・ファイブ・ワン進行への足掛かりとして使用されることが多いです。したがって、ジャズでの使用が目立ちます。ポップスではたまに使用されるレベル。
使用されている楽曲
・白日 /King Gnu(Cメロ)
King Gnuの白日で使用されていますね。楽曲中間部分の「どっかの誰かに…」で高揚感のようなものがグッときます。楽曲の中でもかなり勢いのあるCメロの冒頭で使用されており、推進力のような働きがあるのではないでしょうか。
・ハルカ / YOASOBI(Bメロ、サビ前など)
Ⅶ7について
これは正直使いどころがあまりないコードで、優先順位はすこし低めのセカンダリードミナントになります。
使用されている楽曲
・stella by starlight(JAZZ)
楽曲の冒頭からⅦ7が使用されています。といっても転調を繰り返していくような楽曲なので参考程度にしておいてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
音楽においてセカンダリードミナントというのは、かなり重要なコードになります。これを使いこなせたり、聴き分けられたりできれば、もう上級者といえるのではないでしょうか。ぜひ、マスターしてみてください。
参考になれば幸いです。
では!