コード(和音)理論

なぜ、世の中の楽曲はⅣから始まるのか?〜Ⅳというコード特性の秘密を考えてみる〜

今回は、すこし気になる疑問について考えてみたいと思います。

世の中の楽曲だいたいⅣから始まる?

楽曲を聴いているとどうも気になることがあります。

それが「Ⅳから始まる楽曲多くない?」まぁこういった疑問です。

ここでいうⅣとは、ダイアトニックコードの4番目のコード。つまり、Key:Cで言うところのFコードから始まる楽曲が多いという話です。


近年、賑わせたヒット曲を見てみると…、『夜に駆ける』『Lemon』『紅蓮華』など確かに多い気がしないでもない…。

・夜に駆ける / YOASOBI
・Lemon / 米津玄師
・うっせえわ / Ado
・紅蓮華 / LiSA
・香水 / 英人
・ドライフラワー / 優里
・I Love… / Official髭男dism
・グッバイ宣言 / Chinozo

などなど…。

そういえば『王道進行』『Just The Two Of Us進行』『ポップパンク進行』などもⅣから始まるコード進行ですね。


確かに、作曲などをしていてもついついⅣに手を伸ばしてしまう傾向がある気がしてしまうのではないでしょうか…。

そこで、今回はこのサウンド感がどうして音楽家にとって身近なのか、”始まりのコード”として有用なのか考えてみたいと思います。

コード機能の観点

まずはコード機能の観点から。コードには機能と言うものがあり、トニックが「安定」、ドミナントが「不安定」、サブドミナントが「中間くらい」です。

そして、それらのコードが進む先はある程度決まっている傾向にあり、それを図にするとこうなります。


そして、Ⅳというコードは機能でいうと『サブドミナント(SD)』にあたります。


考えるに、このサブドミナントというのは、両極端な性質を持たず、次のコードへの選択肢が広いといえます。

この中途半端な立ち位置というのはどうも汎用性がいいわけです。

なんせ、ほどほどな不安定感があるのにも関わらず、”どちらにもいけます”からね。Ⅳは「どこかに行きたくなるコード」とも言われたりします。

したがって、このどちらにも転ばない変幻自在な性質(音楽的にいうと浮遊感という感じ…)こそが始まりのコードとしては、汎用性が高いと言えると思います。

メロディとの兼ね合いの観点

歌ものにはコードだけでなく、メロディがつきものです。

したがって、メロディとの兼ね合いの観点は欠かせません。これは、アボイドノート(Avoid Note)という理論ですが、同じスケール内の音であっても相性の悪い音があるんですね。

例えば、Emというコードは、メロディの「ド」や「ファ」の響きを阻害する性質があります。


一方、Fというコードには「相性の悪い音がありません」。アボイドノートなしです。

「別にアボイドなんて普通に使われるやん…」という感じなのですが、わざわざサビ頭でこのような響きを選択することはあまりないんですね。


どうしてもサウンドがボヤける印象が出てしまうのです。(ロングトーンならさすがに気になってしまいますし…。)したがって、どんなメロディにも相性がよい、Ⅳを使用するのはよくも悪くも”無難”だという話になります。

Ⅳは倍音強度が大きい

これまでの話と関連するのですが、もう1つ考えられることがあります。それは、Ⅳというコードの倍音強度の大きさです。

例えば、ピアノで「ド」という音を鳴らすと、その音だけではなく複数の倍音(上方倍音列<自然倍音列>)が鳴ります。

まあ、これは何となく聞いたことのあるお話だと思います。これをCメジャースケールに対してまとめてみると下表のようになります。

これを、Cコードの構成音である「ド」「ミ」「ソ」それぞれみていくとこんな感じ。Keyの主音である「ド」の倍音成分が、「ソ」ではほとんど存在しませんが、「ミ」にはごくわずかに存在することになります。


したがって、Cコードには、Keyの主音に対する「ド」の成分が”それなりに存在する”ということになります。(これを『倍音強度』と呼ぶことにします)

これと同じことを、F(ファ・ラ・ド)について考えると、「ラ」にはほとんど含まれないのですが、「ファ」には、第3番目にドの倍音成分が登場することになり、これは結構強い倍音成分といえます。


したがって、「Fコードの倍音強度はCコードよりも大きい」ということになります。つまり、「F(Ⅳ)は、4番目のコードなのにも関わらず、主和音C(Ⅰ)より、Keyの主音の成分が強い」という何とも以外な結果となるのです。


ちなみにドミナントであるGコードについてみてみるとこんな感じ。倍音強度はほとんどありません。


これを他のコード達でも調べてみると、倍音強度の順列は、おおよそ以下のようになります。

したがって、主音に対する倍音強度は、Ⅳが一番大きいということになります。

これが、Ⅳの持つ浮遊感やどこかに行きたくなる感覚のそれっぽい説明になるのではないでしょうか。

かくいう、Csus4コードも、「ファ」の音を含むことで浮遊感が生まれるサウンドになりますね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

Ⅳというコードの汎用性の高さと、どこかへ行きたくなる響き。これがⅣがコード進行の始めのコードとして使用される要因の1つだと考えられます。

まぁ、理由はどうであれ、Ⅳのコードから始まる楽曲が多いというのは事実です。

ふとした時には、やはりⅣのコードに手が伸びてしまいがちです。それはそれで全然構わないのですが、少し意識してみると普段と違った楽曲を生み出す手掛かりになるかもしれませんね。


参考になれば幸いです。


では!

ABOUT ME
だっとさん
ピアノ、ギター、作曲をする音楽家。ポップス、ロック、アニソン、ボカロなどの楽曲分析、音楽理論、DTM、ギター機材関連の情報を発信! Youtubeでも動画配信しているので見てね!

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