今回は、〇m7♭5というコードについてみていきたいと思います。
〇m7(♭5)とは?
「そもそも、〇m7(♭5)ってなんなん?」というところから見ていきましょう。
これはダイアトニックコード上の7番目に登場するコードですね。ですので、目にしたことはあるんじゃないかなと思います。
ただ、ぶっちゃけ、コード表記もなんかわかりずらいし、響きもいまいちぱっとしないので、ほとんどの人にとって「見てみぬふりをされる」という不遇なコードなのではないかと思います。
したがって「目にはするけど…あまり使われない….。」という印象(?)のコードだと思います。
ただ、このコードは楽曲において使用すると、こっそりいい味を出してくれるコードになります。単体でどうこうというものではく、楽曲の流れの中で見ていくといいのではないかと思います。
〇m7♭5の構成音
コード構成音だけパっと見ておきましょう。コード構成音は「Root、♭3rd、♭5th、♭7th」となっており、○m7に似ていますが「♭5th」が使用されているのが異なる点です。
このような性質から、このコードは、3和音だとdim(ディミニッシュ)の構成音になるという特徴があります。
したがって、名前も別名「ハーフディミニッシュ」と呼ばれることがありますし、表記もそれにちなんだものが存在します。
したがって、楽曲での使い方も一部、dimと似ていることが多々あります。それは後ほど、紹介したいと思います。
〇m7(♭5)の使い方
では、〇m7(♭5)コードの使い方についてみていきたいと思います。
ツー・ファイブ・ワン進行
先ほど紹介した通り、このコードはダイアトニックコードの仲間なので、調性音楽では多く登場することになります。
特にジャズでは頻出コードで、有名な『枯葉(Autumn Leaves)』という楽曲でも見られます。
これは、平行調であるマイナーキー(短調)を考えたときの「ツー・ファイブ・ワン進行」になっているため、マイナーの主和音に繋がるコードとしては非常に重要なコードになってきます。
ポップスの例だと米津玄師の「Lemon」という楽曲で見られますね。これは、Key:G#mなので、主和音(G#m7)に繋がるコードとして使用されています。
これに至っては、Keyの主和音でなくても、”マイナーコードに繋がる進行”であれば、楽曲のKeyに関わらず色んなところで登場します。
経過和音(代表例:クリシェ):サブドミナント機能
ポップスで一番馴染みある使い方は経過和音として使用される方法です。クリシェみたいな用法ですね。例えば、東京事変の「キラーチューン」という楽曲。
これは、サビで緩やかに半音下行するのでわかりやすい例だと思います。
さらに突っ込んだ話をしておくと、次のコードに〇m6が使用されるパターンが多くみられます。これは、コード構成音のトップノートにスケールの下行の流れができるためだと思われます。
この手法はアニソン界隈でよく見られる手法で、例えば、オーイシマサヨシの「ようこそじゃパリパークへ」という楽曲。これは、Bメロの初端にBm7♭5が登場していて、どこか切ない雰囲気を放っていますね。
個人的な解釈ですが、王道進行(Ⅳ-Ⅴ-Ⅲm-Ⅵm)の亜種として使用されることが多いと考えています。試しに、コード進行を「王道進行」に変更しても何の違和感もありません。
コード構成音的に、#Ⅳm7♭5は、「Ⅳmaj7のルート音が半音下がっているだけ」とも考えられますので、サブドミナント(Ⅳmaj7)の代理コードとして解釈されることが多いようです。
さらに、この#Ⅳm7(♭5)というのは、リディアンスケール(Lydian Scale)の一種なので、メジャーキーの楽曲に取り入れてもそれほど違和感がないという特徴があります。
これが俗に言う”#Ⅳm7(♭5)”というやつで、ちょっとマニアックな使い方だと言えるかもしれません。
解決の和音:トニック機能
この用法も結構難しいのですが、一部の楽曲で見られたので紹介しておきます。例えば、Official髭男dismの「115万キロのフィルム」という楽曲です。
これは今まで紹介したDm7(♭5)→G7→Cmという流れが、ツー・ファイブ・ワンの用法ですね。ただ、ここで注目したいのがAm7(♭5)の部分。 解決コードとして使用されており、なかなか面白いです。
これも実は、#Ⅳm7(♭5)なのですが、このコードは転回すると、トニックに近い響きのコードが出来上がるので、「トニック機能」としても解釈できます。
「さっきと言ったことちゃうやんけ!」と思うかもしれないのですが、使用する箇所でいろいろな機能を持つことができるいうのが〇m7(♭5)というコードです。
C6(#11)なんか見るとわかりやすいのですが、先程も言ったように、これは典型的なリディアンスケールのコードになっていますので、やはり、リディアンスケールと関係が深いコードということはわかると思います。
このコードについては、深く掘り下げると色々話すことがあるのですが、難しい話は置いておいて、紹介したような使い方ができるという点だけで十分だと思います。
○m7♭5(ハーフディミニッシュ)の使用楽曲
感電 / 米津玄師
フュージョンチックな印象の楽曲ですね。Bメロやサビでめちゃくちゃ使用されています。
サビだと、楽曲の主和音(Key:G#m7)につながるツーファイブワン進行ですね。
BメロだとFm7-5(#Ⅳm7)からクリシェっぽく行くのかと見せかけて、ツーファイブワンに繋がるという変化球を見せつけています。この辺のコードワークはなかなか面白いと思います。
シル・ヴ・プレジデント / P丸様。
これは最近流行った楽曲。サビ途中で非常に面白い使い方がされています。
これは平行調(Key:Fm)の主和音に繋がるツーファイブワン進行なのですが、ここで一気にマイナー調に移行した印象を受けるのではないでしょうか。
ツーファイブワン進行は解決先のコードの性質を強める効果(カデンツの性質)があるので、このようなニュアンスになるのではないかと思います。
ここでは、あまり深くは触れませんが、この部分は他にも面白い要素が詰まっているのでまた別の記事で取り上げたいと思います。
Teenager Forever/ King Gnu
King Gnuの『Teenager Forever』。ギター主体のコードなのですが、経過和音的に使用されています。上行パターンですね。
このように、コードとコードの間に半音で挿入するという用法はよく使用されます。この辺は、dimも同じように使われることがあるので、dimとしてしまっても問題ありません。
花ハ踊レヤいろはにほ / 田中秀和
田中秀和作曲の「花は踊れやイロハニホ」という楽曲。ラストサビでサブドミナント代理が使用されています。
その他にも、この楽曲はBメロでも使用されています。
これが俗に言う#Ⅳm7(♭5)というやつです。
てか、この作曲家はめちゃくちゃこの和音を多用しますね。(Blackadder Chord、分数augもそうですが…。)
Hello,Again〜昔からある場所〜 / My Little Lover
この楽曲は、このサイトでも度々登場する楽曲(ザ・J-POPという感じですね)です。
これも紹介した#Ⅳm7(♭5)が解決コードとしてが使用されている例になります。
他の記事の絡みでいうと、この部分はオクターブ跳躍も使用されていますし、コード進行もJust The Two Of Us進行っぽい感じにもなっていますし、やはり名曲は現代でも色褪せないなという印象を受けてしまいます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、○m7♭5について紹介しました。まとめると、3つの使い方が存在することになりますね。
①ツーファイブワン進行
②サブドミナント機能
③トニック機能
#Ⅳm7(♭5)に至っては、大きく分けてサブドミナント機能とトニック機能を持つことがあるということで、非常に面白いコードとなっています。
なかなかマニアックなコードですが、こっそり使ってみるとアクセントが出ていいかもしれません。
参考になれば幸いです。
では!