King Gnuの『白日』についての楽曲分析です。土曜ドラマ『イノセンス 冕罪弁護士』主題歌にもなっていますね。
かなりの実力派アーティスト(作曲:常田大希は東京藝大卒)で「ハーモニー」「メロディ」「リズム」さまざまな観点から非常に完成された楽曲だと思います。
この記事では楽曲のコード進行・音楽理論の解説をしていきたいと思います。
では、いきましょう!
使用されているコード進行
この楽曲はキー:D♭メジャーです。♭5つということで演奏は難しそうですね。この楽曲はSwing(スウィング)というリズムになっていて、楽譜では下記のような表記をしているので注意してください。
この記号は「8分音符が3連符よりになっている」という表記です。通常の8分音符が「タカ、タカ、タカ…」ではなく「ターカ、ターカ、ターカ…」という具合になります。
Ⅰ△7-Ⅶm7-Ⅲ7-Ⅵm(Aメロ)
では、楽曲の冒頭。始めて聴いた方はここで一気に惹き込まれるのではないでしょうか。井口さん(Vo.)の声と和音ハーモニーが美しすぎるのが特徴です。
ここでCm7が使用されているのが最大のポイント。通常であればD♭メジャーダイアトニックコードbであるCm7(♭5)なのですが、あえてCm7コードが使用されています。
このコード進行はThe Beatlesの『Yesterday』で使用されているのことで有名なコード進行です。Ⅰ△7→Ⅶm7という流れはポップスでは非常に珍しいコード進行です。
Ⅰ-Ⅰaug-Ⅰ6-Ⅰ△7(Aメロ)
続きの部分のコード内声の動きも非常に美しいです。これは『クリシェ』と呼ばれる手法。コード構成音が上行していく動きになっています。
5th→#5th→6th→7thという動きになっていますよね。この流れが歌の間に挿入されていて際立っています。かなり効果的な使用方法と言えると思います。この辺はあっぱれ。
Ⅵm-Ⅳ-Ⅴ-Ⅲ/#Ⅴ(Bメロ)
続いてBメロです。ここからは16分音符のスウィングになっており「タッカ、タッカ、タッカ…」というリズムになります。
「リズムなんてよくわかんね。」という方でも少し楽曲のノリが変わるのがわかると思います。
Bメロで使用されているコード進行はこちら。定番コードの小室進行と似ていますが、最後にF/Aコードが使用されているのがポイント。
これはFコードの「3rd音」が低音部にきた転回形ですね。こうすることにより、ダイアトニックコードにはない音がベースラインに使用されて少し変わった響きのコード進行になります。
ここが「Adim」と表記されているサイトもありますので説明しておきます。これは「F/A」を「F7/A(4和音)」と解釈したからでしょう。この場合はAdimとコード構成音が似っているのでかなり似通った響きになります。実際に演奏する際はどちらでもよいかと思います。
Ⅵm-Ⅱ7-Ⅳ-(Ⅴ-Ⅲ/#Ⅴ)(Bメロ)
Bメロの続きの部分。ここでも分数コード「F/A」がポイントになっています。
Ⅵm-Ⅳ-Ⅴ-Ⅰ(サビ)
サビの部分。ここでハネのリズムがより強調されてファンキーな感じになります。
Ⅲ-Ⅳ-Ⅱ/#Ⅳ-Ⅲ/#Ⅴ(サビ)
ここもサビの部分。分数コードが使用されていて一筋縄ではいかない響きが肝。
Ⅳ-Ⅵ7-Ⅱm-Ⅴ7(Cメロ)
かなり盛り上がりを演出している中間部分(Cメロ)にいきましょう。ここはセカンダリードミナントであるA♭7を活用したコード進行になっています。ここも素直な響きにしていないのがなかなかです。
Ⅰ-Ⅰ/Ⅶ-Ⅰ/#Ⅵ-Ⅵ7-Ⅱm-#Ⅵ(Cメロ)
ここで注目したいのが「Bコード」です。これはD♭メジャーダイアトニックコードにはないコード。つまり、G♭メジャーダイアトニックの「Ⅳ」のコードになります。
このBコードは「下属調」であるG♭のキーを決定づけるコードですね。それはB音はG♭メジャースケールとD♭メジャースケールに共通していない唯一の音だからです!「実は転調していた…」ということに気づかされるのがこの部分になります。
ラストサビでの転調(半音上)
この楽曲はラストサビで転調しています。キーはD♭メジャー→Dメジャーということで『半音上(+1)』の転調です。転調契機の部分はこちら。
転調契機のコードはFコード(Ⅲ)になっていますね。ここでダイアトニックコードにはないコードを使用することにより、調性のバランスを崩して一気に転調に持っていきます。半音上の転調なので妙なコードの工夫は必要ありませんね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
なかなか現代のポップスでは珍しい要素がちりばめられていたのではないでしょうか。本当に素晴らしい曲ですね。ぜひ、皆さんも聴き込んでマスターそてみるといいのではないでしょうか。
参考になれば幸いです。
では!
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